研究課題/領域番号 |
18K01660
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
高安 雄一 大東文化大学, 経済学部, 教授 (20463820)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国人労働者 |
研究実績の概要 |
まず、韓国で受け入れられている外国人労働者の待遇および家族への送金の状況を、在留資格が非専門就業(E-9)である者に絞り、「2017年移民者在留実態および雇用調査」のマイクロデータで調査した。その結果、外国人労働者の待遇のひとつである所得は、外国人労働者の特性により違いは出るものの、時給が最低賃金を割り込むといった劣悪な待遇を受けているものはおらず、半数以上は最低賃金よりある程度高い時給で働いていることがわかった。つまり韓国で働く外国人労働者の賃金に関する待遇は良いことを明らかにした。また住居に関する待遇も大半の外国人労働者は家賃がかからない環境にあり、この待遇も良いことを明らかにした。さらに、大半の外国人労働者は所得の半分以上を家族に送金しており、外国で就業することの目的を達成していることを明らかにした。 次に、造船業で働く外国人労働者に焦点を当て、業況の悪化により韓国人の労働者の雇用に影響を与えているか否か、造船業が主要産業である慶尚南道巨済市などで実態調査を行うことなどで分析した。具体的には、三星重工業、雇用労働部統営事務所など実態調査を行ったとともに、労働研究院、産業研究院などの研究者より包括的な見解を聴取した。その結果、造船不況により造船業における雇用は減少しているが、外国人労働者が他の産業に移った結果、外国人労働者が韓国人労働者。特に非正規雇用労働者の雇用を奪うといった問題は生じていないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、韓国を事例として、自国の労働者と競合することを避ける仕組みを備えた制度の下で外国人を受け入れた場合、自国の非正規雇用労働者の雇用量および賃金に与える影響をどの程度小さくできるのかについて、マイクロデータを利用した定量分析、実態調査などで明らかにすることを目的としている。 2018年度においては、第一に、韓国が外国人労働者を受け入れたとしても待遇が悪ければ、実際には外国人労働者を受け入れることができないといった問題意識の下、外国人労働者の待遇について調査を行うこととした。そしてマイクロデータによる定量分析の結果、韓国における外国人労働者の待遇は良く、送り出し国から十分な数の外国人労働者を受け入れることができる状態であることを明らかにでき、この調査は十分な成果をもって終了できた。 第二に、実態調査については造船業について行うことができ、韓国造船業でビッグ3と呼ばれる企業の造船所を訪問し、造船所で人事を担当する者より外国人労働者の雇用状況について聞き取り調査ができたとともに、造船業が主要産業である地域の雇用労働部の出先機関において、外国人労働者を直接担当する者より造船業で働く外国人労働者の実態についても聞き取り調査を行うことができた。 よって現在のところ、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2019年度においては、農業部門における実態調査を行うとともに、造船業において実態調査を行い結論付けたことが正しいか否か、マイクロデータを使用した定量的な分析により裏付ける作業を行っていく。 また2020年度においては、農業において実態調査を行い結論付けたことが正しいか否か、マイクロデータを使用した定量的な分析により裏付ける作業を行うとともに、造船業以外の製造業や建設業で働く外国人労働者が、韓国人労働者、特に非正規雇用労働者と競合関係になっていないか分析する。 そして最後に、自国の労働者と競合することを避ける仕組みを備えた制度の下で外国人を受け入れた場合、自国の非正規雇用労働者の雇用量および賃金に与える影響をどの程度小さくできるのかについて、その方策を示すことを予定している。
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