研究課題/領域番号 |
18K01660
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
高安 雄一 大東文化大学, 経済学部, 教授 (20463820)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 韓国 / 外国人労働者 / 造船業 / 農業 |
研究実績の概要 |
韓国では2004年に雇用許可制を導入して外国人労働者を受け入れたが、これによって韓国人労働者、主に非正規雇用労働者との競合が発生し、韓国人労働者の雇用条件が悪化していないか調査した。今年度は韓国に出張し、地方自治体が設置する複数の外国人労働者支援施設を訪問し、韓国における外国人労働者が実際にどのような職業に従事しており、これが韓国人と競合する可能性があるのか調査した。 また昨年度、造船所で勤務するの外国人労働者労働者について現地調査を行ったが、今年度はその結果をとりまとめ、韓国造船海洋プラント協会の資料もの数値データなども加味したうえで、2015年以降の造船業の景況悪化時に外国人労働者を受け入れていたことに起因して、韓国人労働者の就業機会が失われたのかにつき考察した。 その結果、2015年以降に造船業は不況に陥ったが、①造船業において外国人労働者と韓国人労働者の間に競合が生じて韓国人労働者の就業機会が減少したといった事実は確認できなかった点、②韓国の外国人労働者受入れ政策は、韓国人を雇用することが難しい作業を外国人労働者が行っている点を指摘したうえで、外国人労働者と韓国人労働者が補完関係になっていることを考慮すれば、造船業を見る限りうまく機能していると判断した。この結果については、2019年度の日本地域学会の研究大会で報告した。 さらに、韓国の農業における外国人労働者と韓国人労働者の競合の程度などにつき、統計庁の農業センサスのマイクロデータを用いて分析した。その結果、経営規模の大きい野菜農家や養豚農家において、外国人労働者を多く雇用していることがわかった。しかし韓国人労働者との競合関係においては今後実態調査を行って解明することとした。この結果は論文として、九州大学「韓国経済研究」に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は、雇用許可制の導入によって、外国人労働者と韓国人労働者、主に非正規雇用労働者との競合が発生し、韓国人労働者の雇用条件が悪化していないか考察することである。そのために、本研究では、製造業、農業、建設業といった業種別に、外国人労働者と韓国人労働者の間で競合関係が生じていないか、現地調査および計量分析を行うことを予定している。すでに、製造業の中でも造船業および農業については現地調査を行い、さらに定量的な手法を用いて考察を行い、結果を公表するに至っており、残りは建設業の考察だけになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は外国人労働者が数多く従事している建設業について調査・考察を進めていく予定である。建設業については、外国人労働者、特に韓国系中国人の就業者が多く、2000年代後半には外国人労働者と韓国人労働者との競合関係が深刻となったことから、外国人労働者の新規就業が規制されることとなった。 韓国系中国人の韓国での就業実態については、「移民者在留実態および雇用調査」のマイクロデータを用いて、韓国での就業実態を分析したところである。そして、分析結果は大東文化大学経済研究所「経済研究」ですでに論文の形で公表している。 今年度は、韓国系中国人の就業実態に関する定量分析の結果を踏まえ、韓国における現地調査を実施することにより、建設業においてなぜ外国人労働者、特に韓国系中国人と韓国人労働者との間で競合関係が発生し、ひいては政府による規制が行われる事態になったのか明らかにしたい。 さらに、今年度は研究課題の最終年であることから、製造業のなかでも造船業、農業、建設業のそれぞれの業種において、外国人労働者と韓国人労働者の競合関係に関する特徴を明らかにして上で、それぞれを比較することにより、競合関係が発生する、あるいは発生しない環境について考察していくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入が次年度にずれたため10,003円の次年度使用額が発生した。
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