韓国の農業部門は外国人労働者を積極的に受入れている。これは雇用労働力需要が高まるなか、農村より都市、第1次産業より第2次産業が選好されており、農業部門が韓国人だけで労働力需要を満たすことが難しくなっているからである。農業部門における韓国人の雇用は非正規がほとんどであり、農業部門においては外国人労働者の受入れが韓国人の非正規雇用労働者と競合する可能性が高い。 そこで今年度は、労働者を雇用している農家に焦点を当て、どのような特性を持つ農家が外国人労働者を受入れる傾向があるのか、主に地域差に着目して分析した。分析は5年に1度行われる農家に対する悉皆調査である「農業総調査」(2015年調査)の個票データを利用して、プロビットモデルにより行った。被説明変数を外国人の雇用有無、説明変数を営農形態と地域として分析を行った結果、基準とした地域と比較して、外国人労働者を雇用する確率が78.1%高まる地域から、同確率が15.8%低くなる地域まであるなど、地域差の存在が明らかになった。そして地域差が生じた理由につき近郊都市へ交通利便性といった特性に着目して考察を加えた結果、すべての地域に当てはまるわけではないが、都市から遠く韓国人労働者が通うことが期待できない地域において、外国人労働者を雇用する確率が高く、都市に比較的近いため韓国人労働者が通いやすい地域において外国人労働者を雇用する確率が低いという傾向を見出すことができた。 この結果から、農業部門においては韓国人の非正規雇用労働者が就業しにくい地域においては外国人労働者が雇用され、韓国人の非正規雇用労働者が就業しやすい地域においては外国人労働者が雇用されていないこととなり、外国人労働者と韓国人非正規雇用労働者は代替関係にはなく、補完関係にあることが明らかになった。
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