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2022 年度 実施状況報告書

高齢者の就業と介護--家計内の協力と対立

研究課題

研究課題/領域番号 18K01670
研究機関近畿大学

研究代表者

呉 テツ人  近畿大学, 経済学部, 准教授 (50581196)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2024-03-31
キーワード高齢者健康 / 年少期の生活環境 / 社会参加 / 同居
研究実績の概要

中国国家統計局によると、2022年、中国の人口は61年ぶりに減少し、高齢化率は14.9%に達した。高齢化の進展が加速している中、「健康的な高齢化(healthy ageing)」「積極的な高齢化(positive ageing)」の推進は「未富先老」の中国の高齢化対策の鍵となっている。
2022年度は北京大学のCHARLSデータを用いて高齢者の健康への影響要因を分析した。特に注目してほしい結果は次の通りである。
(1)本人15歳前の健康状態をコントロールしても、年少期の生活環境(飢饉経験、生みの親との離別/死別経験、主な扶養者の教育水準、世帯の地域での相対所得)が老後の健康に有意な影響を与える。この結果は高齢者世代だけではなく、現役世代にとっても大きな意味がある。例えば、80年代以降、出稼ぎ労働者の増加に伴い、農村に取り残された「留守児童」が急増し、大きな社会問題になった。親の「欠席」が子供の健康への影響がすでに多くの研究で証明されているが、本研究の分析結果はその影響が長期的に残る可能性を示唆する。
(2)社会参加(労働参加、コミュニティ活動への参加など)、子供世帯との同居や交流頻度が一部の健康指標(身体能力のほか、認知能力、鬱)に有意な影響を与える。現段階の分析で2018年までのデータしかないが、2023年夏に追跡調査が実施されるため、コロナによる行動制限が高齢者健康に与える影響の検証が可能になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

(1)コロナの影響で日本も中国も入国制限があり、現地調査がまったくできなかったです。
(2)本来は人手不足や高齢者福祉関連の財政問題を想定し、高齢者の就業行動に注目する予定であった。ところが近年、人工知能が急速に発展し、中国国内外の情勢も大きく変化し、構造的失業と需要不足失業がともに増加した。特に若者は空前の就職氷河期を迎え、2022年大学新卒の実質就職率が3割未満であった。それによって法定退職年齢の引上げ計画が実質後回されている。このような背景で研究の方向性を再検討した。

今後の研究の推進方策

コロナ・技術革新・米中対立は中国経済だけでなく、健康・就労意欲・家族のあり方・価値感にも大きな変化をもたらした。
2023年度、中国側も日本側も渡航に関する制限をほぼ撤廃する。現地調査を実施する上、これらの変化を取り込み、特に高齢者の健康と家庭内関係に注目し、研究を推進する予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ以降中国への調査や制限付きのデータへのアクセスができず、研究が停滞しました。
机上でデータ分析するだけでは危険であるため、とりあえず成果を出すよりもしっかり現地調査を行い、実態を把握する上で研究を進みたいです。したがって、あえて研究費を使わなかったです。

2023年度、研究費を主に中国での現地調査に使う予定です。渡航制限が撤廃され、中国の政府機関や大学での調査だけでなく、複数の地域を選び家庭訪問する予定です(可能であれば本研究で使うCHARLSデータの調査チームと同行します。)

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公開日: 2023-12-25  

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