研究課題/領域番号 |
18K01672
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
四方 理人 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (70526441)
|
研究分担者 |
西立野 修平 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (20734007)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 女性就業 / 生活時間 / 保育政策 / 地価 |
研究実績の概要 |
本研究は、保育所の整備等の仕事と育児の両立支援施策が、子を持つ母親の労働時間、育児時間、家事時間、余暇時間といった生活時間に与える政策効果の検証および、近年、多くの先進国で観察される女性の社会進出が進展すると同時に育児時間が増加するというパラドクスの解明を行うことを目的としている。本研究は、女性の労働時間と育児時間の変化についての分析と両立支援等の保育政策や最低賃金等の労働政策がそれらに与える影響について考察するものである。本研究の分析からは、労働だけでなく家事・育児および余暇まで考慮した両立支援の効果の検証が可能となり、両立支援施策の本来の目的を問い直すことが期待できるだけでなく、育児時間を規定する要因の分析から、先進国に共通する育児時間の伸長の理由の解明に資することが期待できる。 初年度は、研究代表者の四方が保育所整備の市区町村集計データの整備構築を行った。特に、市区町村の保育所定員と未就学児子ども数の比をとった保育所整備状況データを作成した。分担研究者の西立野は、保育所の民営化が未就学児をもつ母親の就業に与える効果について2000年、2005年、2010年の市区町村レベルのデータを用いて検証を行った(Nishitateno 2019)。その結果、保育所の民営化は母親の就業率を上昇させる効果があり、特に東京都周辺地域においてその影響が大きいことがわかった。保育所の定員や開所時間の弾力的な運用やなどが母親の就業率を高めることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究代表者の四方が厚生労働省から市区町村別の保育所データの提供をうけ、市区町村の保育所定員と未就学児子ども数の比をとった保育所整備状況データの作成を行った。分担研究者の西立野は、GIS (地理情報システム)を用いて、保育所整備状況と地価の変動についての分析に着手し、分析手法の開発を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、これまで作成した保育整備の地域情報と地域別の女性の就業および生活時間情報のマッチング、また、保育所整備状況と地価の情報のマッチングを行い、分析可能なデータセットを構築し、分析を行う。 まず、市区町村・都道府県データと女性の就業や生活時間についての個票データをマッチングしたデータを用い、保育所の整備が進むと、労働時間や育児時間および家事時間にどのような変化が生じるかをみる。特に、Nishitateno and Shikata(2017)が提示した幼稚園からの保育所へのクラウディングアウト仮説を検証する。 次に、保育所整備状況と地価の関係については、GISを用いた分析手法や海外の先行研究のレビューを行い、これまで取り組まれてこなかった保育政策の意図せざる効果について検討を試みる。具体的には、地域サービスの一環である保育所の整備が保育を必要とする母親の利便性を上昇させるだけでなく、その地域の地価を上昇させる可能性についての検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた入力作業やデータ整備にかかわる人件費を支出するためのアルバイト等が見つからず、研究代表者が入力等を行ったため。なお、次年度以降は当該業務にかかわる人員を見つけることができたため、予定通り支出できると考えられる。
|