研究実績の概要 |
本研究は,女性の労働時間と育児時間の変化についての分析と両立支援等の保育政策や最低賃金等の労働政策がそれらに与える影響について考察するものである. 両立支援については,近年,保育所の定員が大きく上昇しているものの,保育所定員の拡充が女性の就労率に与える影響は小さいとされている. そこで,本研究では,保育所定員の拡充等の育児支援が,女性の就労率だけではなく,労働時間や雇用形態についての考察を行うことを目的とする. また,本研究の分析は,労働だけでなく家事・育児および余暇まで考慮した両立支援の効果の検証も目的としており,両立支援施策の本来の目的を問い直すことが期待できるだけでなく,育児時間を規定する要因の分析から,先進国に共通する育児時間の伸長の理由の解明に資することが期待できる. 今年度は,これまで整備を行ってきた地域別保育所の整備状況のデータと女性の就業についての個票データとのマッチングを行い,労働時間及び就業形態の選択に保育環境が与える影響についての分析を行っている.地域別の保育所の整備状況は保育所定員と0から5歳人口の比であり,保育所への入所しやすさを示す. そして,女性だけでなく,男性の育児休業についての分析を行うため,新たなデータについての申請を行い,より近年のデータを用いた分析の準備を行った. 新たに予定している研究では,育児休業制度の変更が,女性だけでなく男性の就労に与えた影響について考察することが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
女性の就労や生活時間に対して,これまで保育所の拡充の影響について研究を行ってきたが,今後は,育児休業制度の制度変更が就労時間等に与える影響についての分析を行う予定である. 使用データは,『労働力調査』(総務省)を予定している. 育児休業制度は,給付金の期間や水準が何度も変更されており,その制度変更の影響を見ることができると考えられる. また,男性の育児休業取得をより促進する政策も進められており,女性だけでなく男性の就労の変化についても研究の対象とする. 加えて,これらの男女の就業の変化が所得格差に与える影響についても考察する予定である.
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