研究課題/領域番号 |
18K01674
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
石川 路子 (伊藤路子) 甲南大学, 経済学部, 教授 (10379464)
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研究分担者 |
福重 元嗣 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10208936)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 障害者 / 就労継続支援事業所 / 労働市場 |
研究実績の概要 |
今年度は(1)我が国の労働市場において、障害の有無が就労環境/賃金格差に与える影響を明らかにすること、および(2)日本とタイににおける障害者施策の比較および雇用状況に関する計量統計分析を実施すること、を目的とし研究を遂行してきた。 (1)については、厚生労働省および各都道府県で扱っている各就労継続支援事業所ごとの就労者の賃金(工賃)データを収集し、その決定要因を分析した。我が国では、何らかの障害をもつ労働者に関する詳細なデータの収集/開示が不十分なこともあり、今後より精緻な分析が必要であるが、本分析では、就労継続支援事業所で就労する労働者の時間あたり賃金は、各地域の最低賃金水準に大きく依存していることが明らかとなっている。また、地域の失業率や法定雇用率達成企業割合等、地域の社会環境要因も事業所の賃金レベルに少なからず影響を与えていることが明らかとなったことから、今後はより精緻にその賃金決定メカニズムを分析する所存である。 (2)については、タイのChulalongkorn Universityの研究者を通じて、タイ政府から障害者雇用に関する詳細な個票データの提供を受けることが決定し、そのための最終手続きを進めていたが、新型コロナウィルス感染拡大という社会状況の中で、現在、この共同研究については中断している。タイにおける障害者施策は、日本の施策を参考に導入したという経緯もあり、両国の障害者の雇用状況を比較することは、両国の障害者の労働市場の構造を明らかにする上で、非常に有益であると考えている。次年度は、社会情勢を踏まえながらも、Chulalongkorn Universityの研究者との共同研究を前進させ、我が国における障害者の労働市場の改善策を検討していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも言及したが、タイでの共同研究については、コロナ禍により個票データの入手およびChulalongkorn Universityの研究者との研究打ち合わせが滞っている状況である。タイ政府が提供予定の障害者の雇用状況に関する基礎データは、精緻な分析に耐えうるだけの質および量であり、我が国のデータだけでは分析できない障害者の労働市場の現状・課題が浮き彫りにできると確信している。データが入手でき次第、最終年度である次年度で一定の結果が出せるよう、準備を重ねているところである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる次年度においては、引き続きこれまでの研究を計画的に実施し、その研究成果を国際学術誌へ投稿していく予定である。我が国の就労継続支援事業所の賃金決定要因については、利用可能なデータをさらに抽出/精査し、より適正かつ信憑性の高い分析結果を導出していく。タイの研究者との共同研究については、社会情勢を勘案しながらも引き続き着実にデータ分析の基盤を整備し、年度末には一定の研究成果を出せるよう効率的かつ計画的に研究を遂行する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、海外渡航が制限され、タイでの共同研究を遂行することができなかった。今年度は延期されていたタイでの共同研究の実施を予定しているため、その経費として研究費を充当する予定である。
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