研究課題/領域番号 |
18K01677
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 政府系金融機関 / 担保チャネル / 銀行貸出チャネル |
研究実績の概要 |
(1)政府系金融機関による直接貸出、信用保証、金融機関への資本注入が果たす役割の比較については、東日本大震災によって生じた企業や銀行への資産の被害が公的関与によってどの程度緩和されたかについての論文を、NBER Japan Project Meetingなどのセミナーで発表した。 (2)担保や個人保証に依存しない貸出の効果については、日本政策金融公庫中小企業事業本部における研究プロジェクトに引き続き参画し、無保証人貸出の効果に関する研究を進めた。 (3)政府関与が貸出市場の競争環境に及ぼす影響については、政府系金融機関と民間金融機関との代替関係を企業レベルのデータに基づいて検証する論文を作成した。この論文は、2008年に政府系金融機関が行った制度変更により、企業のその時点の信用リスクに応じて外生的に貸出金利が変化した事象に注目して、それによって民間金融機関からの貸出が変化したかどうかを調べたものである。 (4)政府による貸出市場への関与の効果のうち、企業の存続・退出に及ぼす影響については、企業間の資金配分の効率性に関する論文を海外学術誌からの要求に応じて改訂中である。また、信用保証と政府系金融機関による直接貸出の効果を比較する研究を進めた。具体的には、それぞれの制度を利用した場合の借り手側の利得を、彼らの信用リスクや保有資産ごとに算出した上で、実際の制度の利用がその理論予測に従っているかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政府系金融機関による直接貸出と信用保証の効果に関する比較、担保や個人保証に依存しない貸出の効果、政府関与の競争環境や企業の存続・退出に及ぼす影響については、それぞれ、大学・学会での研究発表を行う、研究論文を作成する、国内学術誌に掲載する、海外英文学術誌への投稿を行うなど、研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)政府系金融機関による直接貸出、信用保証、金融機関への資本注入が果たす役割の比較については、東日本大震災によって生じた企業や銀行への資産の被害が公的関与によってどの程度緩和されたかについての論文を、改訂した上で海外学術誌に投稿する。(2)担保や個人保証に依存しない貸出の効果については、個人保証を代替して企業への規律付けを行うメカニズムに関する理論モデル構築の可能性を検討する。(3)政府関与が貸出市場の競争環境に及ぼす影響については、企業情報、企業-銀行間関係に関する広範なデータベースを利用して、1990年代以降の日本における銀行合併を網羅的に把握する。その上で、合併が企業-銀行間関係に及ぼす影響を分析する。(4)政府による関与が企業の存続・退出に及ぼす影響については、企業間の資金配分の効率性に関する論文の海外学術誌に改訂稿を提出する。また、信用保証と政府系金融機関による直接貸出の効果を比較した論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度における旅費・その他の支出予定の一部が、年度末にかけての新型コロナウイルスの感染拡大によって、不要となったため。
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