研究課題/領域番号 |
18K01681
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 克俊 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80292746)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | funding liquidity risk / merger and acquisition / bank holding company / Basel III / Net Stable Funding Ratio |
研究実績の概要 |
2019年度はデータベースの加工、理論的な仮説検定するための計量モデルの構築、実際の計量分析等を行った。 データベースでは、流動性を表す指標としてNSFR指標を独自に構築した。ほかに、資産、資本、成長、上場、モーゲージ、コミットメント、資金コスト、ハーフィンダール指数等の地域経済変数、銀行倒産数、Changer、first-time-changerなどのデータを構築した。本分析の中心となるデータはNSFRとChangerであり、NSFRはBasel IIIによる純安定調達比率、Changerは非持ち株会社傘下銀行が持ち株会社傘下銀行となった場合に1をとるダミー変数である。 本研究の主要な仮説は、持ち株会社化において流動性リスクの分散効果と内部化効果のどちらが凌駕するのかである。持ち株会社傘下銀行と非持ち株会社傘下銀行の間に流動性保有量に差があることを実証分析するため、マッチング推定法を用いることとし、マッチング推定量をえるための計量モデルを構築した。具体的には、まず、両グループにサンプル銀行を分類し、持ち株会社傘下銀行のpropensity scoreを推定し、次に、各持ち株会社傘下銀行に非持ち株会社傘下銀行をマッチングし、平均トリートメント効果を推定するというベースラインの方法を構築した。このベースラインの方法にdifference-in-difference 推定量を組み合わせた方法二つを構築した。 また、被説明変数を流動性、主要な説明変数を持ち株会社の傘下銀行数とする線形回帰モデルも構築した。 計量分析の結果としては、①持ち株会社化において流動性リスクの分散効果のほうが強い、②持株会社化が資金調達コストを下げる、③既存の傘下銀行は、傘下銀行数の増加により流動性比率を低下させる、④M&Aにおける合併方法に関わらず流動性リスクの分散効果は存在するという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題となるようなことや予期していないことが起きず、順調に推移した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は論文の執筆、計量分析モデルの改善、論文の発表、論文投稿を中心に本研究の最終段階を漸次的に進めていく予定である。 執筆については、図表を除いて約30ページの原稿を執筆する予定である。計量分析モデルの改善については、論文執筆や発表の段階で、よりよいexpositionとなるように調整していく予定である。論文投稿については、査読付きの国際雑誌で3または4以上の評価(ABDC)をもつ雑誌に投稿する予定である。論文の投稿先から修正依頼があるときには、コメントに応じた論文の改訂を行い、速やかに再投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースの関係で謝金の支出が少なかったことと日程の関係で外国カンファランスに出張できなかったことがあげられる。
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