研究課題/領域番号 |
18K01682
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
得田 雅章 日本大学, 経済学部, 教授 (10366974)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域金融機関 / 多様性 / VAR |
研究実績の概要 |
2021年度は、本研究の成果の一部を2023年度に発表予定の共著書『金融構造の変化と不安定性のマクロ動学(仮題)』(共著者:二宮健史郎)に掲載するための論文執筆に従事した。全11章構成のうち、単独執筆として3つの章を担当し、それぞれを書き上げた。 うち一つは2021年度における書下ろしであり、本研究における計量分析手法のベースとなっているVARモデルの解説に充て、構造VARモデルと誘導形VARモデルの基本構造や関連性を明記するとともに、付随する主要な分析ツールであるインパルス応答関数とその意義を論じた。次いで、日本のマクロ経済に合致するようリカーシブな制約条件を付したモデルを推計することで両VARモデルの橋渡しをし、インパルス応答の比較検討を行った。二つ目は、2020年度に本研究成果として雑誌『季刊・経済理論』に掲載された得田(2021)の内容を共著書の趣旨に基づき再編集したものであり、地域銀行の多様性戦略についてその実績と展望を論じた一編である。三つ目は、2017年度に雑誌『経済セミナー』に発表済みの得田(2017)の内容を共著書の趣旨に基づき再編集したものであり、量的質的金融緩和(QQE)の効果と日本マクロ経済への影響について論じた一編である。 このように、2021年度は共著書に収録予定の各論文執筆に従事したため、実績として公表したものはなかった。共著書の編集作業自体は着実に進展しており、収録論文の大半はすでに編集済みである。また、今後の研究の推進方策で記すように、2つの学会・研究会より論文寄稿の依頼を受けているため、本研究成果の一部の公表媒体として予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初研究最終年度としていた2020年度にコロナ禍が発生したため、教務負担が激増し研究期間の延長を申請した。2021年度には引き続くコロナ禍対応に追われるとともに、大学転出に伴う教務・庶務負担が加わったため、計画の再調整を強いられた。そのため本研究の再延長を申請せざるを得なかった。 研究は成果発表媒体としての共著書編集を中心に進めてきた。2021年度の大きな作業は、共著書第2章にあたる書下ろし論文の執筆であった。これは、本研究における計量分析手法のベースとなっているVARモデルの解説およびインパルス応答の比較検討を行ったものである。他、2020年度に本研究成果として雑誌『季刊・経済理論』に掲載された得田(2021)の内容を共著書の趣旨に基づき再編集したり、2017年度に雑誌『経済セミナー』に発表済みの得田(2017)の内容を共著書の趣旨に基づき再編集した。二宮氏との共著論文は5つの章を占め、それぞれはすでに内外の雑誌に発表済みのものである。うち3編は英語論文である。2021年度は共著書の趣旨に基づきそのうち2編を邦訳版として再編集した。 このように、2021年度は共著書に収録予定の各論文執筆に従事したため、実績として公表したものはなかった。共著書の編集作業自体は着実に進展しており、収録論文の選定および再編集もほぼ終えている。残すは英語論文1編の邦訳であり、これは2022年度早々に仕上げ、著書全体の調整を経て2023年度中の刊行を目指す。また、今後の研究の推進方策で記すように、2つの学会・研究会より論文寄稿の依頼を受けているため、本研究成果の一部の公表媒体として予定している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍に対応するための教務負担増大に伴う研究遅延ならびに大学転出に伴う雑務が生じたため、十分な研究時間を確保することができず、本研究期間を更に1年間延長することとなった(変更前:2018年度~2021年度、変更後:2018年度~2022年度)。2022年度は変更後の最終年度となるため、1~4年目の成果を取り入れ、金融政策効果を地理空間の視座から実証研究に取り組む。実証分析データはこれまでで整備してきたので、パネル推計法をスタティックなものからダイナミックに拡張して、各変数の状態依存(state dependent)効果に注目した分析を実施し、スタティック推計との差異を比較検討し新たな知見を見出す。研究成果の一部は、全12編の論文集としてまとめた共著書『金融構造の変化と不安定性のマクロ動学(仮題)』に収録を企図しており、その編集作業を共著者である二宮健史郎とともに引き続き進めていく。共著書の刊行は2023年度を予定している。 本研究成果の公表媒体としては、上記共著書の他に以下2つの学会誌および共著書を選定した。それぞれの執筆条件に合った論文を編集中であり、以下にその概要を記す。一つは資産評価政策学会の学会誌である『資産評価政策学』への寄稿であり、タイトルを「マクロ経済変数と資産の価格」とした。経済学と実務家の立場から経済の諸変数と資産の価格の関係をパネル分析手法により明らかにし、資産の評価をするにあたっての情報を提供する。特に、所得や利子率等と地価の関係を定量化し、資産を評価するにあたっての示唆とする。二つ目は私設研究会(経済政策研究会)メンバー11名による共著書「これからの暮らしと経済」への寄稿であり一つの章を担当する。地方銀行を中心とする金融業界について、フィンテック動向を踏まえたうえで展望するという内容で、数理モデルや計量経済分析は控え、総体的には叙述的にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は書籍あるいは備品購入に予算を充てる予定だった。しかし、コロナ禍に対応するための教務負担増大に伴う研究遅延ならびに大学転出に伴う雑務が生じたため、十分な研究時間を確保することができず、書籍・備品等の執行も滞ることとなり、計画の再調整を余儀なくされた。 2022年度はコロナ禍が落ち着きつつあるものの、コロナ対策を伴った対面授業という従来の授業以上の負担がかかるため、2022年度前期の研究進捗は緩やかなものとなる見込みである。その遅れは、前学期終了後の夏季休暇期間および後学期終了後の春期休暇期間で取り戻す予定である。 書籍あるいは備品購入等の執行も、上記期間中を予定している。
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