研究課題/領域番号 |
18K01682
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
得田 雅章 日本大学, 経済学部, 教授 (10366974)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域銀行 / 多様性 / VAR |
研究実績の概要 |
2022年度は、これまでの本研究成果の集約および公表に重点を置き、以下2冊の共著書へ掲載するべく、編集作業に従事した。 1つは、2023年度に発表予定の共著書『金融構造の変化と不安定性のマクロ動学(仮題)』(共著者:二宮健史郎)に掲載するための編集作業である。全11章構成のうち、単独執筆として3つの章、および二宮氏との共同執筆として5つの章について、各章の関係性を考慮し、重複ヵ所の削除や文言の統一化、総ページ数の調整を図るとともに、前・後書きの編集も進めた。同時に出版社の候補を4社ピックアップし、各出版社が強みとする経済分野や世間的な評価を注意深く検討した。出版社確定の後は、編集担当者と連絡を密にとり着実に手続きを進めている。出版費用に供するために、令和5年度の大学学部の出版助成への応募を予定している。 もう一つは、研究会メンバー13名による共著書『これからの暮らしと経済』の編集および発行である。グローバル化、少子高齢化、デジタル化、脱炭素化、ジェンダー平等などをキーワードに、これからの暮らしを経済の視点から考え、これらのキーワードのもつ意味を理解することで、現代の社会を理解できるようになることを目指す、全14章構成の経済書である。「第11章 地域銀行の将来展望」を分担執筆した。内容は、地域銀行(地銀・第二地銀)を対象に,ますます普及していくフィンテックの動向を踏まえたうえで、業務の多様性をキーワードに展望するというものである。ハーフィンダール・ハーシュマン指数を用いて業務多様化率を独自に算出し、銀行のパフォーマンス指標の一つであるROAとの関係性を確認した。時系列、業態別、規模別、地域別に検証し、業務の多様性が高まりと収益には順相関があることを確認した。この共著書は、3月末に株式会社文眞堂より発行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究最終年度にコロナ禍が発生したため、教務負担が激増し研究期間の延長を数度にかけて申請することとなった。2022年度にはコロナ禍対応に落ち着きがみられたものの、大学転出に伴う教務・庶務負担に加え、オンライン・オンデマンド形式から対面に回帰した際の調整に翻弄、計画の再調整を強いられた。そのため本研究への取り組みが後回しとなり、再延長を申請せざるを得なかった。 研究は成果発表媒体としての共著書編集を中心に進めてきた。2022年度の大きな作業は、共著書2冊の執筆・編集作業と同時並行で進めた、出版社の選定および出版助成先の検討であった。 共著書のうち1冊は年度中に発行にまでこぎつけたが、もう1冊については助成先を大学学部の出版助成に絞り、令和5年度中に応募・採択を経て年度末までの発行を目指す。 このように、本研究は成果の集約および公表段階に進んでいるものの、当初研究目的で重要視してきた資産価格(地価)の取り扱いについては未だ不十分である。この点について、所得や利子率などマクロ経済変数と鑑定評価地価との定量的な関係を示すとともに、資産評価の課題および展望を提示する。そのため、全国基礎自治体レベルの平均地価データを整備したうえで、パネルデータ分析推計を行う。地価関数のパネル推計では、鑑定地価を基礎自治体ごとに代表させるための加重平均地価を用いる。ただし、町村レベルでのマクロ経済データの収集には困難を伴うため、複数町村をひとまとめとした郡単位のデータ活用を進めてきた。説明変数として、課税対象所得、事業所数、実質金利、可住地面積、人口密度を挙げ、それぞれパネルデータに仕上げている。すなわち、815市区、371郡の計1186を個体(i)とし、2012~2021年を時点(t)とする完備パネルデータを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は変更後の最終年度となるため、これまでの研究成果を取り入れ、資産価格(地価)とマクロ諸変数との関連を、地理空間分析法を活用しつつ証研究に取り組む。 全国地方自治体単位でのデータ整備を行うが、物価水準や利子率等で町村単位では存在しないデータが多々存在するという問題がある。そのため地理的に近接している自治体データの加重平均をとることによる非観測データの活用を企図することや、町村レベルではなく郡レベルという一般的に利用価値の薄い地方区分を活用することで、この問題を克服する。地価に関しても、単純平均値による弊害を避け、より地価レベルの高低を考慮した地価指標としての加重平均地価を新たに算出し、推計に供する予定である。これまでに815市区と307郡としてデータを整備している。 このように、実証分析に供するコアデータはこれまでで整備してきたので、追加データは更新分のみとし、2022年(あるいは年度)までを取り入れたパネル推計を実施する。市区のみや郡のみ、あるいは特定地方のみの推計等、パネルデータの特性を活かした比較分析を検討している。各種検定結果に応じて適切なパネル推計法を採用し、結果を地方創生とからめて考察する。 研究成果の一部は、資産評価政策学会の学会誌である『資産評価政策学』への寄稿として年度内に公開予定である。タイトルは「マクロ経済変数と資産の価格」とした。経済学と実務家の立場から経済の諸変数と資産の価格の関係をパネル分析手法により明らかにし、資産の評価をするにあたっての情報を提供する。特に、所得や利子率等と地価の関係を定量化し、資産を評価するにあたっての示唆とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は書籍あるいは少額の備品購入に予算を充てる予定だった。しかし、コロナ禍のオンライン授業から対面授業への過渡期に係る教務負担が想定していた以上に重く、研究遅延を余儀なくされ十分な研究時間を確保することが困難だった。その結果、書籍・備品等の執行も滞ることとなり、計画の再調整を余儀なくされた。 今後の研究の推進方策で述べた『資産評価政策学』への寄稿論文には、2022年度までのマクロ経済パネルデータによる実証分析を掲載する予定である。そのマクロ経済データ作成のためには、金融機関ごとの店舗数、従業員数、および本支店の住所情報を必要とする。本務校で契約しているオンラインデータサービスの日経NEEDS「国内外マクロ・金融データ」では、そうしたデータの提供がない。国内金融機関の個別機関に関するデータは、日本金融名鑑((株)日本金融通信社発行)が唯一、一元的に収集できるデータソースとして存在している。これまでも、00、06、12、18,22年度版より定期的にデータを整備してきた。そのため、2022年度3月末時点の上記機関別データが掲載される同名鑑の23年度版(販売価格5万円程度)は、次年度の予算として執行したい。
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