研究課題/領域番号 |
18K01684
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
敦賀 貴之 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40511720)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経常収支 / 為替レート / 開放経済モデル / 不完全情報 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、合理的期待モデルに基づくマクロ経済モデルに、不完全情報を導入し、その含意を検討するものである。令和2年度の研究実績は以下の通り。 まず、前年度からの継続の形で、不完全情報モデルの検討・改良を進めた。特に推進している研究の一つに、閉鎖経済の設定で、企業が直面する産業構造の違いと不完全情報の相互依存関係が価格設定行動に及ぼす影響を議論した研究がある。この研究では、経済主体間に共通した共有知識がない状況を考慮した不完全情報モデルを用いている。現状では、モデルが複雑なため、閉鎖経済の設定を用いており、開放経済への拡張は見送っている。結果を整理し、学術雑誌への投稿を進めた。現在、国際的学術雑誌からの改訂要求を行けている。なお、この研究論文の最新版は、内閣府経済社会総合研究所、ESRI Discussion paper series No. 359として、公表済み。、 次に、行動経済学的なアプローチを用いた開放経済の一般均衡モデルの分析を行い、分析結果を整理した。具体的には、開放経済における企業の標準的な価格設定問題について、経済主体が払う注意の度合いが不完全となる行動経済学的なアプローチを用いた。このアプローチからわかった点として、合理的な不注意にもとづく不完全情報モデルと類似した結果が得られることが明らかになった。なお、この研究では、研究の方向性の修正もあり、経常収支に対する具体的なインプリケーションは得られていないが、貿易の交易条件の変動パターンに理論的な解釈を与えることができた。なお、この研究論文の最新版は、大阪大学社会経済研究所、ISER Discussion paper No. 1121として公表済み。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の現在までの達成度はコロナ禍のもとで、国際学会での研究報告が進まなかった点、および国内外での研究打ち合わせが進まなかったが、オンラインで複数の研究報告や研究打ち合わせを活用し、順調に進展している。 具体な進捗状況としては、研究論文1を査読付き学術雑誌に投稿し、改訂要求を受けた。そのため、現状、研究論文1の改定を最優先として進めている段階である。また、研究論文2はディスカッションペーパーとして公表、複数の国内研究会で研究報告しただけでなく、研究報告の採択が極めて難しいNorth American Winter Meeting of Econometric Society(2021年1月に開催)で報告することができた。この研究については、現在、国際的学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
国際的学術雑誌への掲載許可まで至っていない2篇の論文について、できるだけ早い段階で掲載を目指す。研究論文1については、学術雑誌からの改訂要求と再投稿を8月をめどに進め、この研究を優先的に対応する。研究論文2については、学術雑誌に投稿中であるため、改訂要求があれば、それに対応して、できるだけ早く研究成果として公刊する。また、小国開放経済のRBCモデルと不完全情報モデルについても随時検討しており、時間の許す限りこの研究も進める予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウィルスによる移動制限が予想以上に長引いたため、予定していた国内研究者との研究打ち合わせ(東京-大阪間出張)および、米国での研究打ち合わせを見送らざるをえなかった。今後、旅費等については、研究成果に役立つ形で柔軟な対応を模索していくが、令和3年度は無理のない範囲内で研究費を執行する。
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