2022年度(最終年度)においては、"The Cross-Euler Equation Approach to Testing for the Liquidity Constraint: Evidence from U.S. Macro Data"と題された論文を学術誌に公刊した。本論文は、米国の家計の借入制約の有無をクロスオイラー方程式を用いて検証する試みであり、米国マクロ経済データを用いて検証した所、奢侈財においては借入制約が検知できず、必需財においては借入制約が検知された。これは低所得家計が借入制約に服し、高所得家計は借入制約に服していない事を含意する傍証であると解釈できる。 この他、過去5年間の研究テーマであった、日本の金融機関の利鞘決定要因の研究成果と日本の金融経済環境のレジーム転換に関する研究成果をワーキングペーパーとして取りまとめ公開した。1本目の論文は"The Effects of Firm and Bank Balance Sheet Conditions to Net Interest Margins: Evidence from Loan-level Firm Survey Data"と題された論文であり、1万社を超える企業アンケート調査を元に銀行の貸出金利と預金金利の差(利鞘)がどのような要因で決定されているのかにつき実証分析を行った。2本目の論文は"Trend Inflation in the Japanese pre-2000s: A Markov-Switching DSGE Estimation"と題された論文であり、1950年代から90年代の日本のマクロ経済データを元に、レジーム転換を許容するマルコフスイッチ型マクロ経済モデルを構築してモデルの推計を行った。実証分析の結果、70年代後半に長期インフレ率の低下が検知された。
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