研究課題/領域番号 |
18K01688
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小野 貞幸 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (80602002)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 量的緩和政策 / 株式市場 / 非対称性 |
研究実績の概要 |
米国の金融政策と株式市場に関する実証が終わり最終的な結果を得た。サンプル期間は1973年1月から2020年12月にわたり、新型コロナウイルスの感染拡大の期間も含んでいる。金融政策として量的緩和策(QE)の影響を分析するため、先行研究に従い米連邦準備理事会(FRB)の緩和策の開始時期を、米国のサブプライム危機後の2008年11月とし以後の期間をQE期間として、主に株式リターンへの影響を分析した。FRBの量的緩和策を定量化する変数として全資産額を用いた。
金融政策は経済状況に影響されることが考えられる。そのため回帰分析を実施するにあたり株式リターンの説明変数として内生問題なく機能するように、CPIや実質生産量、株式市場の恐怖指数を含むベクトル自己回帰(VAR) モデルから期待外資産額を評価しQE変数として使用した。株式リターンとしてS&P500、サイズ・ポートフォリオ、産業別ポートフォリオのリターンを分析対象とした。まず株式リターンとQA変数のタイムラグとの単回帰から、ほとんどの場合有意に正に影響することが示されたが、公益事業株は(10%の水準で)有意とならなかった。評価された回帰係数から大型株よりも小型株が幾分大きく影響されることを見出した。
量的緩和策の非対称的な影響を調べるためマルコフスイッチイングモデルを応用した。ほとんどのリターンに対して、特に低リターンの状態時に係数が有意な正を示した。結果として緩和政策は株式市場が低調な場合より有効であることが明らかになった。さらに現在価値恒等式を基礎とし、緩和策の影響をリスクプレミアム、キャッシュフロー、実質短期金利の3つの効果に分けて測定した。全体的な傾向として、リスクプレミアムとキャッシュフローの効果が金利効果に比較して大きなことが観測された。加えて多くの場合ベア市場でリスクプレミアムとキャッシュフローの効果が有意を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は3年で完了する計画であったが1年延長することになった。コロナの影響で授業の準備に予定より多く時間を割く必要があった。しかしながら、米国に関する実証はすべて遂行できた。また、使用データのサンプル期間を最大限延ばし実証の信頼性を高めることが可能になった。
|
今後の研究の推進方策 |
米国での実証結果を基に英文での論文を書き上げ海外学術雑誌に投稿する。また学会での発表を行う。データはすでにほとんど取得しており、日本市場での分析も米国市場と同様の方法で実施し年内に英語論文を完成させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中に論文を作成できなかった。そのため英文校正費用や学会発表費用がかからなかった。またコロナの影響で海外学会大会がリモートで開催されることになり旅費が不必要になった。次年度はこれらの費用のため、また実証研究で使用するソフトや言語校正ソフトなどのライセンス更新料のため交付金を使用する。
|