研究課題/領域番号 |
18K01689
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山本 周吾 山口大学, 経済学部, 准教授 (70593599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | non-core liability / global liquidity |
研究実績の概要 |
2018年度は2つのテーマについての研究を行った。1つ目は、欧州でのグローバル流動性のネットワークを通じた波及経路の実証分析について。2つ目は、グローバル流動性が資本規制を実施している新興国にどのような経路で波及し、それが国内の金融バブルにどう波及するか、についてである。 まず、1つ目のテーマであるが、本研究では金融バブルを表すnon-core liabilityに注目した点が大きな特徴である。これは国際決済銀行(BIS)の調査研究において注目されている指標でもある。2007-8年の世界金融危機時において、米国だけでなく、ユーロ域内の国々で銀行間の国際的なnon-core liabilityの貸借の規模が非常に大きくなり、蜘蛛の巣のようなネットワークが緻密に張り巡らされるようになった。本研究では、VARモデルを用いることによって、オランダ、ベルギーとルクセンブルグがネットワークの中心にあることを実証した。対照的に、経済規模が大きなドイツとフランスの影響力は大きくないことも明らかにした。以上の研究は神戸大学経済経営研究所の「国際金融研究部会」のプロジェクトにおいて、英文の学術書として、出版される予定である。 2つ目は、新興国の中でもBRICsに対象を絞り、VARモデルを用いて、グローバル流動性の国内の金融バブルへの波及効果について明らかにしたものである。なお、ここでも金融バブルの指標として、non-core liabilityを使用した。この研究の特徴は、資本規制に対する「抜道」に着目した点である。BISや国際通貨基金(IMF)の報告書によると、国際収支統計の直接投資の”debt instrument”を利用して多国籍企業は資本規制を迂回している、としている。そこで、本研究では、これに注目して、この「抜道」を通じてグローバル流動性が国内のnon-core liabilityに影響を及ぼしていることを実証分析によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で先述した2つの研究プロジェクトのうち、1つ目は共著という形で神戸大学経済経営研究所の「国際金融部会」の英文の学術書の出版プロジェクトが進行中である。2つ目は、BRICs諸国のうち、中国に対象を絞って、英文の学術雑誌(IMF economic review)に投稿しているため。また、各種学会及び研究会(RIEBセミナー(国際金融研究部会共催) (於、神戸大学)、日本金融学会秋季全国大会、日本金融学会西日本部会)で研究報告を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、資本規制が厳しい中国に注目している。そして、主に米国を発生源とするグローバル流動性が資本規制の厳しい中国に、どのように影響を及ぼしているか、について、オンショア市場と香港・シンガポールなどのオフショア市場との間の関係に注目して、分析を進めている。 また、資本規制が厳しい中国だけでなく、資本移動が自由な先進国にも注目して、オフショア市場とオンショア市場の関係を、国内金融市場、ディリバティブ市場、外国籍の金融機関、などの視点から、国際金融の重要な理論モデルである金利平価モデルを用いて、明らかにする。 なお、上記の研究では科研費で購入したデータベースを活用することになっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内の学会への出席を取りやめたために、「次年度使用額」が発生した。その分、2019年度は国内の学会への参加を追加的に増やして、使用することにする。
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