研究課題/領域番号 |
18K01697
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
芹田 敏夫 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80226688)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペイアウト政策 / 株主優待 / サーベイ調査 |
研究実績の概要 |
1)先行研究のサーベイ、実証分析に用いる仮説と分析手法の検討 本研究の目的に対応する分野である、日本企業のペイアウト政策の研究、配当・自社株買いの代替性に関する研究、機関投資家・外国人株主がペイアウト政策に与える影響に関する研究、小口投資家行動が株式市場に与える影響に関する研究、について、先行研究のサーベイ調査を行った。我々が2017年に行なったサーベイ調査から、日本企業においては、米国企業とは異なり、配当と自社株買いに代替性が低いことが示されたことから、株主優待との代替性を加えて、財務データを用いて全上場企業に対象を広げて分析を行う本研究の重要性が明らかになってきた。また、先行研究を踏まえて、実証分析に用いるために必要な複数の仮説の候補を挙げ、パネルデータ分析の手法、説明変数、操作変数の候補の検討を含めた分析手法の検討を行った。 2)ペイアウト・株主優待データの整理、基礎的分析 実証分析に必要な、最新の個別企業の日次株式リターンデータと株主優待データを購入し、必要なデータを収集した。また、個別の日本企業のペイアウト関連データ、コーポレート・ガバナンス関連データを日経NEEDS FinancialQuestより入手した。これらの最新のデータと合わせ、われわれが過去に行ったサーベイ調査データを組み合わせ、実証分析を行うための準備としてのデータの整理を行った。収集したデータの基本統計量を算出し、全体的な傾向の把握を行った。株主優待の導入企業では、株式資本コストが低下する一方で、株価急落リスクが高まるという結果が得られたが、株価急落リスクがなぜ高まるかについて、仮説を検討し、実証分析を進めた。また、2018年度以前から研究を進めてきたペイアウト政策のサーベイ調査の論文の修正を行い、2018年12月に学会誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で進めている3つの研究テーマに必要である、検証可能な仮説の候補の検討や実証分析手法の検討には、先行研究を踏まえて十分な時間を使って吟味する必要がある。また、本研究で中心となる実証分析を行うために必要な、上場企業の多数のペイアウトやコーポレート・ガバナンスに関連するデータは大量であるため、データの整理に多くの労力が必要となる。そのため、初年度である2018年度においては、先行研究のサーベイ、検証すべき仮説と実証分析手法の検討、データの収集整理に時間を割かざるを得ないことは、当初の計画のとおりである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、引き続き実証分析で用いるデータの収集・整理を続けながら、まず、株主優待をなぜ実施するのか、株主優待実施による資本コスト低下と急落リスク上昇の原因、株価過大評価の有無について、検証を行い、論文にまとめることを目指す。また、日本企業の配当重視傾向と、配当・自社株買い・株主優待間の代替性の検証を、財務データを用いて検証を進め、主要な実証結果を得ることを目指す。 2020年度は、引き続き、実証分析を続けて3つの研究テーマに基づく複数の論文の完成を目指す。また、完成させた論文を国内、海外で報告し、国内学会誌や国際雑誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要な理由は、2018年度は、購入予定のデータが、別予算で購入できたために購入費用が少なくなったことによる。具体的には、株主優待データの2017年分とNEEDS Cges2017年分はすでに別予算で購入済みで、株主優待データ2018年分を購入するのみを購入したためである。
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