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2021 年度 実施状況報告書

アジア通貨建て貿易取引の現状と課題:市場取引データと企業インタビューによる分析

研究課題

研究課題/領域番号 18K01698
研究機関学習院大学

研究代表者

清水 順子  学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード為替リスク / 貿易建値通貨 / 基軸通貨 / 円の国際化 / 人民元の国際化 / 決済手段 / アジア現地通貨利用 / 為替協調政策
研究実績の概要

本研究は、アジア域内の貿易取引や決済において米ドル以外の通貨の需要がどれだけ高まる余地があるかという問いに対して、為替取引の市場データと企業イン タビューという両面からアジア通貨の量的・質的な分析に取り組み、アジアの為替制度と金融危機対応のあり方に対する政策提言を行うことを目的とする。 新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航禁止などで最終年度が延長された2021年度は、on-lineを活用して海外研究機関との共同研究を進めるなど、以下4点の研究を行った。
第一に、清水が経済産業研究所(RIETI)でこれまで行ってきた日本企業の貿易建値通貨選択と為替リスク管理に関するアンケート、およびインタビュー調査の結果をまとめた書籍「日本企業の為替リスク管理―通貨選択の合理性・戦略・パズル」が9月に発刊された。
第二に、清水は2021年4月以降アジア開発銀行(ADB)との研究コンサルタント契約を行い、山寺氏を含むADBスタッフとともに国際銀行間通信協会(SWIFT)データを用いたアジアにおける通貨利用に関する共同研究を開始し、2021年10月のASEAN+3の会議で政策提言を行った。
第三に、清水は税関データを扱う第1回目の公募研究として採択され、2022年3月から税関データを使って各国別の貿易建値通貨シェアを算出し、日本の輸出入業者のインボイス通貨選択の要因分析を開始した。この公募研究の研究機関は2年間であり、成果については、今後財務省内での研究会報告、承認を得て、論文を執筆し、ジャーナルに投稿する予定である。
第四に、清水が所属するRIETIの研究プロジェクトの一環として定期的に行っている日本の本社企業を対象とした第四回目の「貿易建値通貨選択と為替リスク管理に関するアンケート調査を2022年3月より実施した。この成果については、今年度のRIETIの研究会での報告を経て、公表される予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まずは、これまでの研究成果とコロナ禍での経済情勢を踏まえた書下ろしの研究成果をまとめた書籍を昨年度発刊することができたのが大きな成果である。
2020年初頭からの新型コロナウイルス感染の世界的な拡大による海外渡航自粛により、海外研究機関との共同研究のスタートは遅れたが、2021年度はオンラインを使ってアジア開発銀行(ADB)との共同研究を開始し、国際銀行間通信協会(SWIFT)との研究meetingなどを経て、研究成果をASEAN+3の会議で報告することができた。SWIFTのデータを用いた研究はADBを中心とする政策会議のみで公表可能であり、一般的なアカデミック論文として公表はできないというSWIFTの厳正なルールがあるため、現時点ではADBのワーキングペーパーとして公表するという当初の目的を達することができていない。これについては、SWIFTと交渉中である。また、税関データを用いた公募研究に採択され、2022年3月から開始した財務総合研究所での税関データを用いた研究についても、財務省内での審査を経ないと成果を論文として公表できないという縛りがあり、今年度に論文として公表できるかどうかは微妙であるが、最終年度である2022年度には何らかの成果を発表できるものと期待している。

今後の研究の推進方策

2022年度前半も引き続き新型コロナウィルス感染拡大による海外渡航自粛により、アジア通貨利用の実地調査は行うことはできない。しかし、2021年度以降はアジア開発銀行(ADB)との共同研究として国際銀行間通信協会(SWIFT)の市場取引データを用いたアジア域内での通貨利用の研究をまとめ、また財務総合研究所で税関データを用いて各国別の貿易建値通貨シェアを算出し、日本の輸出入業者のインボイス通貨選択の要因分析を開始することもできた。どちらも非公開データであり、研究成果の公表にはそれぞれの機関の承認が必要であり、今年度内に論文として一般に公表できるかどうかは未定ではあるものの、ASEAN+3の財務大臣会合や財務省内での会議で政策資料として貢献されることが予定されている。研究成果の公表については、入念に準備しながら対応したいと考える。もし年度後半に海外渡航自粛が解かれたら、ADBの研究者とともに実地調査を行うことも視野に入れている。
本研究は、計画当初は海外に立地する日本企業の現地法人や現地企業などにインタビュー調査を行うということを目指していたが、その代わりにSWIFTや税関データといった通常は使うことができない貴重な未公開データを用いた分析に置き換えて、研究目的を果たすべく研究を続行している。これらの研究を公開できる道筋については今後ADB、および財務省と議論しながら進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

2020年初頭からの新型コロナウイルス感染の世界的な拡大による海外渡航自粛により、海外調査や学会報告などができなかった。一方で、SWIFTのデータ利用などについては、共同研究者であるADBが購入しており、本研究費から支出する必要がなく、次年度に持越しとなった金額が大きくなってしまった。
今年度については、海外渡航の自粛が解除された後は、これまで予定していたが実施できなかった海外共同研究者(ADB、Columbia University)の訪問や海外の学会での研究報告のための渡航費、及び論文の英文校正などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Asia Development Bank(フィリピン)

    • 国名
      フィリピン
    • 外国機関名
      Asia Development Bank
  • [図書] 日本企業の為替リスク管理 通貨選択の合理性・戦略・パズル2021

    • 著者名/発表者名
      清水順子 伊藤隆敏 鯉渕賢 佐藤清隆
    • 総ページ数
      285
    • 出版者
      日本経済新聞出版社
    • ISBN
      978-4532135188

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公開日: 2022-12-28  

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