研究課題/領域番号 |
18K01698
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
清水 順子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 貿易建値通貨 / 基軸通貨 / 税関データ / 為替リスク管理 / 決済通貨 / 人民元の国際化 / 現地通貨建て |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア域内の貿易取引や決済において米ドル以外の通貨の需要がどれだけ高まる余地があるかという問いに対して、為替取引の市場データと企業イン タビューという両面からアジア通貨の量的・質的な分析に取り組み、アジアの為替制度と金融危機対応のあり方に対する政策提言を行うことを目的とする。2022年度は、前年度と同様に財務総合研究所での関税データを用いた研究、アジア開発銀行(ADB)とのon-lineを活用して海外研究機関との共同研究を進めるなど工夫しながら、以下4点の研究を行った。 第一に、清水は税関データを扱う第1回目の公募研究の成果として、各国別の貿易建値通貨シェアの算出から得られた知見をまとめた論文を作成し、財務総合政策研究所のDPとして12月に公表した。それと同時に、同じデータを用いた日本の輸出入業者のインボイス通貨選択の要因を探る実証分析を開始した。前者の論文については、2023年度に学会発表を行う予定である。本年度は業種別の貿易建値通貨シェアを算出することにより、さらなる知見をまとめて公表する予定である。この公募研究の最終年度となるため、2年間の成果については、今後財務省内での研究会報告、承認を得て、論文を執筆し、ジャーナルに投稿する予定である。 第二に、清水は2021年4月以降ADBとの研究コンサルタントとしてADBスタッフとともにSWIFT データを用いたアジアにおける通貨利用に関する共同研究を行っている。2022年度は、アジア各国の金融取引がどの国の金融機関によって仲介されているかという内容でデータ分析を行い、ASEAN+3の会議で報告された。また、財務省の要請により、ロシア・ウクライナ危機後の金融制裁がロシア、中国を中心とした反米諸国の決済通貨に与えた影響についてSWIFTデータを用いて分析したが、この内容な残念ながら機密情報のため非公表となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
財務総合研究所での税関データを用いた公募研究として、各国別の貿易建値通貨シェアの算出から得られた知見をまとめた論文については、財務省内での審査を経て、2022年12月に財務総合政策研究所のDPとして公表することができた。この論文については、2023年6月の国際経済学会春季全国大会で報告予定である。現在も引き続き税関データを用いた実証分析を進めており、これらの成果については2023年度中の公開を目指している。 ADBとの共同研究については、SWIFTのデータという非公開情報を用いているため、論文として公開することができないが、ASEAN+3の財務大臣会議や財務省内などで結果は報告され、政策立案のための重要な情報提供として貢献している。 当初予定してた国外の企業インタビューについては、残念ながら実施できていないが、清水が参加している全国銀行協会主催の金融調査研究会(2022年-2023年)において、アジア現地通貨取引状況に関するインタビューを日本の大手金融機関を対象に行っており、これらの知見を今後生かしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
財務総合研究所で行っている税関データを用いた研究については、現在行っている実証分析の結果をまとめて2023年度にいくつか成果として論文を公表するとともに、学会発表などを経てさらに内容をブラッシュアップさせ、最終的には海外ジャーナルの投稿を目指す。 ADBとの共同研究については、2023年度は国際決済銀行(BIS)のデータを用いた分析をフィンランドの金融機関と共に共同研究する計画がある。これについても年度内に何らかの成果を上げたいと考えている。 本研究は、計画当初は海外に立地する日本企業の現地法人や現地企業などにインタビュー調査を行いながら研究成果をまとめるということを目指していたが、コロナ下の渡航禁止により、現地調査ができなかった。その代わりに税関データといった通常は使うことができない貴重な未公開データを用いた分析やADBの研究コンサルタントとしてオンラインを活用した他国の研究者との共同研究に置き換えて、当初の研究目的を果たすべく研究を遂行している。最終年度では、前述のBISのデータも含めて、データを用いた実証分析として研究成果をまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年初頭からの新型コロナウイルス感染の世界的な拡大による海外渡航自粛により、海外調査や学会報告などができなかった。一方で、SWIFTのデータ利用などについては、共同研究者であるADBが購入しており、本研究費から支出する必要がないため、次年度に持越しとなった金額が大きくなってしまった。
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