• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

家計レベル消費の高次モーメントと資産価格の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01699
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

和田 賢治  慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30317325)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード消費の高次のモーメント / 家計調査 / 資産価格 / 非完備市場 / 定常性
研究実績の概要

本年度はBasu et al.(2011)(以下BSW2011)のPrivate Insurance Pareto Optimal(以下PIPO)及びDomestically Incomplete (以下DI)のpricing kernelを用いて、Constantinides and Ghosh(2017)(以下CG2017)のように消費の三次のモーメントが資産価格に影響を及ぼす理論モデルの構築を行った。CG2017のモデルを、BSW2011のモデルの仮定を用いて定式化し直す理由は以下の通りである。
BSW(2011)のPIPO及びDIのpricing kernelはKocherlakota and Pistaferri(2007)(以下KP2007)のpricing kernelの応用であり、CG2017のpricing kernelはConstantinides and Duffie(1996)(以下CD1996)の拡張である。これらの2つ流派のpricing kernelは一見似ているが、背後にある確率過程に対する前提が根本的に異なる。CD1996及びCG2017は消費の成長率を定常と仮定するが、KP2007及びBSW2011は対数消費のレベルに定常性の仮定をおく。前者では消費のレベルは非定常となるためジニ係数が発散するとの問題がある。それに対して後者ではジニ係数は発散しない。
このような理由からCG2017のBSW2011流の再定式化を行ったのが本年度の理論的貢献である。ただしCG2017ではEpstein-Zin流の効用関数が用いられているが本年度は第一歩として、CRRA型効用関数を用い、ごく初歩的は推定及び検定を2つのpricing kernelを用いて行った。そしてDIのpricing kernelモデルでは危険回避度および時間選好率が妥当な値になった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までのところ、順調に進捗している。データの整形も終了し、当初予定通りにCG2017のモデルを、BSW2017における確率過程の仮定を用いて再定式化が完了している。
本論文のモデルにはCG2017同様観測されない確率変数オメガが存在する。このオメガを同定するために3つの方法を考察した。1つめの方法はオメガと消費の2次のモーメントの厳密な関係式を使用する方法である。2つめはオメガと消費の3次のモーメントの厳密な陰関数の関係式を使用する方法である。3つは、2つめの式をテイラー展開し、陽関数の形(ただし消費の3次のモーメントまで含む)を使用する方法である。本来は2の手法をとるのが最も望ましいが、推定及び検定に用いるGMMの推定式の中で陰関数の方程式を解く解法が判明しなかった。そのため本論文では3つめの手法を用いた。
ただしこれは当初予定通りだが、Epstein and Zin方式のrecursive preferenceは導入していない。本論文のモデルにrecursive preferenceを導入するのは当初予想通りに理論的に困難さが予想されている。

今後の研究の推進方策

今年度は8月から研究代表者がダーラム大学に1年間研究留学で訪問の予定である。いままでは研究代表者がイギリスの時間に合わせて夜の11時頃から深夜1時頃までスカイプで研究打ち合わせを行っていた。画面に数式を交互に表示して議論を行ったが、画面サイズの関係から数式全体を表示できず、打ち合わせが難しかった。今年の8月からダーラム大学を訪問することにより、BASU教授との打ち合わせがはるかに簡単に進展すると思われる。従って打ち合わせの結果、理論モデルの若干の修正、その修正モデルを用いたGMMによる推定・検定、その推定・検定結果の検討という作業がこれまでよりもスムーズに進展する事が予想される。一方で理論的モデル構築の困難さは変わらないため、BASU教授と綿密な打ち合わせをし、現状モデルの飛躍的一般化ではなく、可能な範囲での段階を経た拡張化をめざす。その際必ずしもCG2017のモデルにおける定式化にとらわれず、別の方面での拡張化も柔軟に考察する。

次年度使用額が生じた理由

本年度において、旅費が当初予定よりも若干少額ですんだ。そのため次年度使用額が生じた。
次年度において、八月より研究代表者が一年間BASU教授の所属するダーラム大学ビジネススクールに研究留学することになっている。その際、研究代表者が主として実証研究を行うため、複数台のコンピューターを船便で送付する予定である。その運賃を確保するために、次年度に繰り越しを行った。

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi