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2020 年度 実施状況報告書

家計レベル消費の高次モーメントと資産価格の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01699
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

和田 賢治  慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30317325)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード非完備市場 / CCAPM / 家計調査 / クロスセクションの分散 / クロスセクションの歪度 / DSGE
研究実績の概要

今年度の成果は3つである。一つ目は理論および実証分析の精緻化である。具体的には本論文は前半のファイナンス部分(消費に基づく資産価格理論のカリブレーション分析)と後半のマクロ部分(同一モデルにショックを追加したDSGE分析)に分かれている。今年度は後半部の分析モデルを変更した。昨年度は直接は観察できない「家計レベルのリスク」(家計レベルの消費に対するショックのクロスセクションの期待値)の時系列変化に対して、関数形を仮定し、時系列モデルとして分析していた。今年度はこの仮定を廃止した。「家計レベルのリスク」と家計レベルの消費のクロスセクションの分散は一定の関数関係が存在するため、観察できない「家計レベルのリスク」ではなく、観察できる家計レベルの消費のクロスセクションの分散に関数系を仮定して、時系列モデルとして分析した。この結果観測できる変数を直接分析対象としたため、関数系の妥当性を判断できるようになった。また分散分解による分析では、安全資産収益率、価格・配当比率・超過収益率に対する説明力が、「家計レベルのリスク」のショックより、家計レベルの消費のクロスセクションの分散のショックの方が説明力が上昇し、定量的に異なる結果を得た。
二つめは標本の期間である。昨年度までは2014年第4四半期までの英国家計調査のデータを使用していた。今年度は2019年第1四半期までデータをダウンロード・加工し、分析に必要な家計一人当クロスセクションの非耐久財・サービスの消費レベルのクロスセクションの分散及び歪度を求めた。この長い期間で分析をし直したが、分析結果は短い期間の結果と定性的には変化がなかった。
三つめが、論文発表である。コロナの影響により参加予定の学会が軒並み中止し、意見効果の機会が減少した。しかし年度初めにダーラム大学で、秋に日本ファイナンス学会で、そして春に高麗大学において発表を行い、意見交換ができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究実績にも記載したが、今年度は後半の分析方法(具体的には確率過程として考察する外的ショックの変更)をし、標本の期間を延長し、またなんとか3回論文発表をすることができた。しかしコロナの影響は大きく、2020年4月から9月の半年間は論文発表の機会が大幅に減少し、また学会参加の機会もほとんどなかった。また2019年8月から2020年7月まで英国ダーラム大学に滞在していたが、2020年4月からはコロナの影響で食料の調達もままならず、当初は外出もできなかったため、マスクも購入できず、研究に費やす時間が大幅に減少した。2020年8月からは日本に帰国したため、研究が大幅に進んだ。その結果上記の本質的に大事な理論的・実証的拡張を行う事ができた。
今年度後半からはオンラインワークショップやオンライン学会も開催が開始し、またオンライン発表の器機もととのい、さらにオンライン発表に対する経験も蓄積されてきた。そのため半年間のフィードバックのロスが発生したが、後半からはなんとかほぼ通常の研究に戻ることができた。

今後の研究の推進方策

今年度は前半のファイナンス部分及び後半のマクロの部分のさらなる精緻化を行う。具体的には前半のファイナンス部分は、それぞれ高度に非線形な時点tと時点t+1の確率変数(「家計レベルのリスク」)の非線形関数の比である確率的割引因子(stochastic discount factor)の期待値をどう計算するか、計算した結果のモデルの現実妥当性が論点になっている。期待値をどのように計算するかという手法上の問題と、非常に非線形な変数の比の期待値をとった結果危険資産の収益率の理論値と観測値が乖離するという実証上の問題がある。
今後は、後半のマクロ分析の分析対象確率変数の変更をヒントとし、観察できない「家計レベルのリスク」ではなく、観察できる家計レベルの消費のクロスセクションの分散の関数として、確率的割引因子を定式化しなおす。さらにConstantinides and Ghoshでも近似が行われている事に鑑み、本研究でもt+1時点での変数をt時点の変数で、1次または2次の関数系を仮定した上で予測を行う。そしてこの予測した変数をt+1時点の変数の代わりに代入することによって分析しなおす事を検討する。この結果、直接は観測できない「家計レベルのリスク」をモデル化することの是非に対する批判を避け、直接観測でき標本としても計算ずみの各時点における家計レベルの消費の分散の時系列データをモデル化する。
後半のマクロ部分は、現在は前半のファイナンス部分の外的ショックが1つという分析に対して、マクロレベルの消費と配当の成長率という2つのショックを追加している。分散分解分析における配当のショックの説明力はないため、このショックを排除し、ショックが2つあるモデルでの再分析や、ほかのショックを加えた上での分析を追加する。さらにすでに今年度も論文発表を行い、コメントを基にさらに精緻化を行う論文完成を目指す。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルスのために、当初参加予定であった学会が軒並み中止になり、学会参加の機会が失われたため。次年度はオンライン学会の登録費用やソフトウェアーの更新、分析するコンピューターのメモリー増設、オンライン発表のためのさらなる器機の準備などに使用する予定である。

備考

共同研究者のダーラム大学ビジネススクールで行った発表のリンク
https://www.dur.ac.uk/business/news-and-events/event-details/?id=46275&eventno=46275
2021年3月24日高麗大学オンラインワークショップ発表

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] ダーラム大学ビジネススクール(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      ダーラム大学ビジネススクール
  • [学会発表] Household Risk and UK Financial Markets2020

    • 著者名/発表者名
      和田賢治
    • 学会等名
      日本ファイナンス学会第2回秋季大会(オンライン)

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公開日: 2021-12-27  

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