研究課題/領域番号 |
18K01700
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 教授 (20266068)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非伝統的金融政策 / イールド・カーブ・コントロール / フィリップス曲線 / 名目GDPターゲティング / データ / 協調の失敗 / 実質硬直性 / 需要牽引型の景気循環 |
研究実績の概要 |
2020年初頭に発覚した新型コロナ・ウィルスの感染の拡大によって,日本・米国及び欧州の中央銀行は,資産買入れの縮小志向から,財政支援策の大幅な拡張に伴う再度の資産規模の拡大へと,非伝統的金融政策の強化を余儀なくされている.このような現況を鑑み,本研究は,2020年度において以下の三つの視点から研究を進めた. 第一は,コロナ危機後の社会経済環境の変化に対応する金融政策に関する.これまでの長期停滞の遠因と考えられる三つの要因(財政逼迫の下での金融政策の正常化の困難,人工知能の普及による中間層の雇用喪失,超グローバル化と国内政策との矛盾)は,コロナ危機後,政策空間の狭小化,ロボット等による生産自動化の加速,グローバル化の反動という形で顕在化すると見られる.それらのリスクが引き金となる次なる金融危機への対応としての新しい金融政策について考察した. 第二は,新しい金融政策に関して考えられるより具体的な三つの可能性(イールド・カーブ・コントロールと中央銀行の独立性の関係,水平化したフィリップス曲線に代わる期待の協調を図る構造,集計的実質リスクに対する保険としての名目GDPターゲティングのメリット)について指摘した. 第三は,近年におけるプラットフォームによる個人情報データの活用に基づく企業の価格支配力の上昇に関する.非競合性を有するデータという生産要素を考慮するマクロ経済モデルを構築するために,消費者の有する特性に基づくヘドニック需要に関する産業組織論のアプローチを援用し,消費者の特性に関するシグナルに基づく企業の価格差別化を定式化する.その上で,寡占市場における企業の価格差別化による協調の失敗について明らかにし,実質硬直性や需要牽引型の景気循環についても分析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究協力者との議論はオンラインにて継続してきたが,研究報告を行い意見交換する場としての海外のコンファレンスへの出張が,新型コロナ・ウィルスの感染拡大のため,禁じられてきた.また,研究室に設置しているデスクトップのパソコンが,コロナ禍で起動させない期間が長く続き,経年劣化のため作動しなくなった.これらの理由から,大幅に研究の進捗が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,研究の遅れを取り戻すため,以下を計画している.第一に,研究報告の機会を求めて,学会・コンファレンス・セミナーでのオンライン報告に応募する.第二に,故障したパソコンに代わり,新しいパソコンの購入・設置を予算の範囲内で速やかに行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ・ウィルスの感染拡大により,海外出張が不可能となり,旅費の支出が出来なくなった.また,長期間の放置を余儀なくされた研究室のパソコンが故障し,新しいパソコンの購入が求められたが,コロナ禍でのリモートワークの促進から適当な物品の調達が難しくなったため,次年度への繰越が生じた.新年度には,可及的速やかに新しいパソコンを購入し,作業に供する予定である.
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