研究課題/領域番号 |
18K01702
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
鈴木 史馬 成蹊大学, 経済学部, 教授 (60583325)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 投げ売り / 不完備市場 / レバレッジ |
研究実績の概要 |
「金融機関による投げ売り(Fire Sale)の資産価格・資源配分の効率性への含意」をテーマとする本研究の中核的な研究課題は、資産価格の変動,特に金融危機の初期に観察されるような金融機関の株式の投げ売り(Fire Sale)による株価のファンダメンタル水準からの下方乖離はなぜ生じるのだろうか?そして,そのような株価の下落は株式リスクプレミアムにどのような影響を与えるだろうか?さらに,動学的な資源配分の効率性や,家計の経済厚生にとってどのような意味があるのだろうか?を解明することにある。 平成30年度中に一般均衡モデルを構築し、金融機関による投げ売りが生じるような競争均衡が存在することを示し、この理論モデルを使い、資産価格へのインプリケーションも分析した。令和元年度には理論が主な対象とする、2007年から2008年にかけて生じた世界金融危機時のデータを整理した。具体的には、所得格差の性質、金融機関や家計の資金循環統計の資産残高の推移、また株式価格指数と取引高などが、理論モデルと概ね整合的であることを明らかにした。これらを論文としてまとめ、国際的な学術雑誌に投稿した。 また、本研究を遂行する中で、金融機関の投げ売りの背後にあるレバレッジ投資(負債の拡大を伴う高収益高リスク資産への投資)には、資産間の裁定取引機会の存在があることを明らかにした。上記の研究では、家計の所得格差とそのような個別的所得リスクが保険されないような市場の不完備性に注目した。しかし、不完備市場だけでなく、家計(一般投資家)の主観的なリスク評価が異なる状況も、金融機関にとっての裁定取引機会になりうることに気づいた。そこで、家計(一般投資家)の主観的なリスク認識を考慮に入れた資産価格モデルに関する理論的な研究を行い、ワーキングペーパーとして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度中に国際的な学術雑誌に投稿する段階まで来たのでおおむね順調に推移しているといえる。また、本研究課題に関連させることができるような派生的な研究を実施し、ワーキングペーパーとしてまとめることができた。そのため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度にも計画した通り、論文が大部になることが分かり、「投げ売りを伴う競争均衡の存在」「株式リスクプレミアム」「経済厚生と政策的対応」など、細かな点に分け、複数の論文を執筆していくことを計画している。具体的には、現在投稿中の論文の次として、経済厚生と政策対応、特に金融規制などをテーマとする研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への参加を目指し、論文を投稿していたが、残念ながら採択に至らず、その分予算支出額が少なかった。次年度以降に国際学会や英文校正などに支出する予定である。
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