近年、金融市場間の国際的な連動性が従来との比較上大きく高まってきているという背景・状況を踏まえ、本研究では、金融市場における各種資産間の国際的なスピルオーバー(資産の変動性の他資産や他市場への漏出(spillovers))の状況・効果に関する実証・計量的な解明を主たる目的として2021年度も研究を推進してきた。 既存研究では、同一のアセットクラス間の関係に関する分析が多いことから、本研究では、特に異なるアセットクラス間や、これまであまり分析されてこなかった特定のセクター間の国際的なスピルオーバーの状況・効果に着目しつつ、実証・計量的な研究を推進してきた。 上記のような目的や方針に基づき研究を推進した結果、研究期間4年目である2021年度も複数の研究成果の公刊・発表に至った。これらの複数の成果のうち、特に本年度に公刊されたREIT(不動産投資信託)、為替レート及び株式間の関係を分析した論文は、日本の金融市場の異なるアセットクラス間の関係に焦点をあてたものであるが、これまでにあまり厳密な分析事例や十分な研究実績の蓄積が見られないと思われるREITと為替レートとの関係を含むものであること等から、2021年度の特色のある研究実績である。その他今後の研究に繋がるような関連研究の成果も複数得られており、これらの成果は、次なる関連・発展研究にも効果的に繋がっていくものと考えられ、今後の更なる新しい研究に活かしていきたいと考える。
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