研究実績の概要 |
1) ファクターリスクパリティ戦略に基づくポートフォリオ最適化について研究を行った. 特に, 日本株式市場において投資対象ユニバースをTOPIX100構成銘柄, 日経225構成銘柄, MSCIJAPAN構成銘柄を対象とした場合に, ポートフォリオのアクティブ運用のファクターリスクが均等になるような投資戦略を提案し, そのバックテストによる検証を行い, 時価総額平均指数を上回るパフォーマンスを得ることができた. また, 米国や英国・欧州市場を対象に同様のリスクパリティ戦略に基づくポートフォリオ最適化戦略を提案し, 各国市場において, リスクパリティ戦略に基づくポートフォリオはいずれも時価総額加重平均指数を上回るパフォーマンスを得ることができた. この結果はAsia-Pasicic Financial Analysis誌に掲載された. ファクター投資の戦略の一つとして, ファクターボラティリティの逆数(IFV)が均等になるようなポートフォリオ構築を提案した。提案手法は, 日本, アメリカ, ユーロ株式市場にて長期のポートフォリオ運用のパフォーマンス検証を行い, 各市場の時価総額ポートフォリオを上回るリターンを得ることができることがわかった. この結果はInternational Review of Financial Analysis誌に掲載された. 2) 円周上の確率分布に関する非対称分布に関する研究を行なった. 正弦摂動を用いた非対称円周分布の混合分布に関して, 最尤推定量の一致性を示した. この結果はMetrika誌に掲載された. また, 尺度変換に基づく非対称分布の推定量の性質について研究した. この結果は京都大学数理解析研究所講究録にまとめ, 国際誌に投稿中である. 3) 複雑ネットワークにおける統計指標のブートストラップ法を提案し, 国際会議にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関して, 2019年度には 研究論文5報, 国際会議報告5回の研究成果を得ることができた. 国際会議報告において報告した研究成果は2020年度に投稿論文としてまとめ, 国際誌に投稿するよう準備している. 高次元時系列解析とネットワークモデルの関連に関する研究は金融工学におけるポートフォリオ最適化問題を用いて現在研究を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は, 2019年度に引き続き下記3点の研究を行う. 1) 円柱上の時系列データに対して, 隠れマルコフモデルを用いた解析を行う. このとき, パラメータ推定方法や推測理論について研究を行う. 2) 幾何情報を用いた時系列解析法の研究を行う. 高次元時系列モデルは, パラメータ数の増加や変数間のボラティリティの相関等, 様々な性質を扱う必要があるが, 金融資産価格のリターン系列のネットワークモデルによるクラスタリング手法を用いることで推定における困難を回避する可能性がある. そのようなネットワーク時系列モデルの提案とパラメータ推定方法に関する研究を行う. ここで幾何情報とは, スペクトル密度関数の形状や, 自己相関構造を幾何的にとらえて得られる特徴量を指し, そのような特徴量に基づく統計手法を用いた解析を行う.
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