研究実績の概要 |
1) 円周上に値を取る角度変数の確率分布に関して, 尺度変換を用いた非対称分布を考え、その母数推定に最尤推定量および近似ベイズ推定量, 事後確率最大推定量を用いたときの, 各推定量の漸近分布を導出し、シミュレーションによる精度パフォーマンスを比較した。また、角度データと実数データの同時分布からなる隠れマルコフモデルを考え、その最尤推定量の性質を調べた。この研究結果は, Econometrics and Statistics誌に掲載された。また, 単位円板上の確率分布を利用した画像分類手法を提案し, 実用可能な識別精度が得られることを確認した。この研究は, 国際会議で報告した。 2) 東京都公示地価を用いて、空間モデルを用いた地価モデルを推定し、1997年から2021年に渡る地価モデルの変遷を調べた。地価分布の空間非均一性に対処するために、バリオグラムパラメータの推定には、ある程度の空間定常性が確保できるようなクラスタリング手法に基づく地域の分割を, また、地理的荷重回帰モデルの適用によって対処した。分析の結果、東京都中心部と東京都西部における環境要因が地価に与える影響は時間の経過とともに格差が拡大する方向の推移していることを明らかにした。この結果は、Asia-pacific Journal of Regional Scienceに掲載された。 合わせて国際会議において研究成果報告を行った。 3) 補助情報を利用したトピックモデルに基づいた行列分解モデルを提案し, 推薦システムへ応用した。提案手法は, 新規ユーザに対する新規アイテムの推薦問題(コールドスタート問題)に対して有効であることを検証した。 4) 位相的データ解析を利用した時系列クラスタリング手法について、その方法論と応用に関する報告を国際会議にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関して, 2021年度には, 研究論文2報, 国際会議報告3件の研究成果を得ることができた。国際会議報告において報告した研究成果は2022年度に投稿論文としてまとめ, 国際誌に投稿するよう準備している. 2021年度に引き続き高次元時系列解析とネットワークモデルとの関連に関する研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は, 2021年度に引き続き下記3点の研究を行う. 1) 円柱上のデータに対して, 混合分布モデルを提案し、その最尤推定量の漸近的な性質とEMアルゴリズムによる母数推定方法を考える。 2) 幾何情報を用いた時系列解析法の研究を行う. 高次元時系列モデルは, パラメータ数の増加や変数間のボラティリティの相関等, 様々な性質を扱う必要があるが, 金融資産価格のリターン系列のネットワークモデルによるクラスタリング手法を用いることで推定における困難を回避する可能性がある. そのようなネットワーク時系列モデルの提案とパラメータ推定方法に関する研究を行う. 3) 空間非定常性を考慮した空間統計モデルと方向統計学における各種円周分布との関連を明らかにし、空間不均一性を円周分布を利用して表現するような確率モデルの提案とその評価を行う.
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