研究課題/領域番号 |
18K01709
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆康 明治大学, 商学部, 専任教授 (60361888)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイナス金利政策 / 量的・質的緩和政策 / 日本銀行 / ベーシススワップ / 金利スワップ / 国債 / イールドカーブコントロール |
研究実績の概要 |
2つの視点から研究を実施した。(1)日銀が量的・質的緩和政策とマイナス金利政策を実施していた時期では、6カ月物と12カ月物のベーシススワップレートはマイナスの水準にあり、海外の投資家はマイナス金利での資金調達が可能であった。日銀が量的・質的緩和政策を行っていた時期には、10年物と20年物の金利スワップレートは12月物のベーシススワップレートと一対一の関係にあった。また、5年物の金利スワップレートは6カ月物のベーシススワップレートと共変動を示した。マイナスベースでの調達幅が拡大するとともに、金利スワップレートは低下していたことになる。しかし、日銀がマイナス金利政策を導入してからは、ベーシススワップレートと金利スワップレートの共変動は観測されなかった。マイナス金利政策が金利市場に何らかの構造変化をもたらしたと推測される。 (2) 2018年7月30日・31日の金融政策決定会合に際して、事前に長期金利目標の柔軟化に関する観測報道が流された。これを背景に国債市場では長期金利の誘導目標が引き上げられるとの思惑が強まり、決定会合の当日まで長期金利は上昇傾向を辿った。31日付けの日銀の公表文に長期金利の誘導目標水準をゼロ%に据え置く旨が記載されていたため、決定会合の結果が発表された13時2分以降、買いが優勢となり、国債10年物利回りは0.05%まで下落する場面があった。先物市場でも現物市場と同様な動きを示し、結果発表の直後から買い戻しが優勢となり、国債10年物先物は150円80銭まで上昇する場面があった。国債10年物利回りは0.06%でこの日の取引を終えた。黒田総裁がこの日の15時30分から開催された記者会見で、国債10年物利回りはマイナス0.2%から0.2%の間に収まるよう金融調節を行う方針を示した。このため翌1日には売りが優勢となり、国債10年物終値利回りは0.12%まで上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18年度に2つの観点からの研究を実施し、2本の論文を刊行したため。
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今後の研究の推進方策 |
、19年度は(1)国債とベーシススワップ市場の分析、(2)マイナス金利政策下における短期金利のトランスミッションの分析を行う予定である。20年度は、マイナス金利政策下における国債と金利スワップ市場の裁定に関する分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の旅費につき、大学からの補助を用いて、経費の一部を賄ったため。国際学会の旅費に充当する予定である。
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