研究実績の概要 |
研究計画期間(平成30~令和2年)の初年度においては, [1]会社利益予想の改訂が株価発見過程に与える影響の分析, [2]企業のCorporate Social Performance (CSP)が会社利益予想精度に与える影響の分析, [3]特許情報とCSPが企業のリスク・リターン特性に与える影響の分析, [4]商標権情報が株式価値と財務特性に与える影響, について実証分析を実施し, 国内外の学会での研究発表を行い, 一部については論文として成果を公開した. [1]では, 個別銘柄ティックデータから計算された5分間隔データを用いて, 東京証券取引所による取引システム(arrowhead)の稼働後に, 会計情報に対する市場反応も高速化したことを示した. [2]ではCSPの高い企業ほど, 会社利益予想の精度が高いことを実証的に明らかとした. 次に[3]では, moderator-mediator modelを用いて, 技術競争力(特許情報), CSP, そして株式上で評価されたリスク・リターン特性の相互関係について分析し, 技術競争力の高い企業ほど, 投資家との信頼関係の構築を目的としてCorporate Social Responsibilities(CSR)を意識した経営を行っており, その結果としてリスクが低いことが示された. 最後に[4]では商標権の量的, 質的な向上は, 企業のリスク低減と付加価値の創出につながることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別株式ティックデータを用いた研究では当初は5分間隔データを使用する予定であったが, 1分間隔データを使用した分析に変更した. これに伴う追加コーディング, データの再処理により, マーケットストラクチャー関係の分析に若干の遅れが生じた. ただしCSR, 特許情報, 商標権情報に関する分析については当初の計画をほぼ達成した.
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今後の研究の推進方策 |
株式個別銘柄ティックデータの再処理と実証分析用1分間隔データの構築は2019年6月に修了する予定で, これにより非財務情報開示の株価発見過程への分析の開始が見込まれる. CSR評価インデックスについては, データ更新を終え, 直近年度分の指数の計算に入っており, これを用いた研究についても進展が期待できる.
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