研究実績の概要 |
2019年度においては, 前年度に続いて特許権情報, 商標権情報, Corporate Social Responsibilities (CSR)情報が, 企業の収益性, リスク, 企業(株式価値)に与える影響について実証分析を実施した. 研究結果を取りまとめ以下に述べる4編を公表した. まず井出・竹原(2019)では, 商標権情報が企業の財務リスク, 市場リスク, デフォルトリスクに与える影響を分析し, 商標権ポートフォリオが企業の直面するリスクに対して削減効果を持つことを示した. また井出・竹原(2020)では, 特許権情報と商標権情報が企業価値に与える相互作用効果を検証した. その結果として, 企業価値に対して特許権と商標権が与える効果が, 補完的である企業群と代替的である企業群の両方が存在することが明らかとなった. 一方, Suto and Takehara(2019)は, CSR情報が経営者予想制度に与える影響について分析し, Corporate Social Performance (CSP)の総合評価スコアが高いほど, 経営者予想の制度が高いことを示した. またSuto and Takehara(2020)は, 企業が保有する特許ポートフォリオの質と, CSP評価スコア, リスク間の関係を調査した. その結果, 研究開発投資に積極的な企業ほど市場リスクは上昇するものの, CSR活動はそうしたリスク上昇を緩和することを, 単純傾斜分析(Simple Slope Analysis)と2段階最小二乗法を用いて示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特許情報, 商標権情報, そしてCSR情報が, 資本市場に対してどのような影響を及ぼすかについて分析し, 2編の論文を新規に執筆, 2編について改訂した. 年度内にそのうちの1編が査読付き学術誌に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は, 研究期間の最終年度にあたり, 雇用関係が研究開発戦略の効率に与える影響について新規に研究に着手している. ただしこれ以外の論文も含めて, 国内外の学会において積極的に成果を公表し, その後に査読付き学術誌に投稿することを予定していたが, 新型コロナウィルス感染拡大に伴い, 特に国際会議の多くが不開催, あるいは2021年度以降に延期となっており, 成果公表については計画の変更を余儀なくされている.
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