研究実績の概要 |
本研究課題の申請時の研究期間は2018~2020年であったが, コロナ禍に伴う実証分析用データ納品の遅れ, 研究環境面での制約から1年間延長したため, 2021年度が最終年度となった. 当初の最終年度である2020年度, そして2021年度ともに, ほぼ当初計画に沿う形で研究が実施され, 2021年度については国内外の査読付学術誌に論文が掲載された. まずCSR関係では, 企業の金銭的・非金銭的報酬が技術競争力を強化し, 最終的に付加価値を創出する仕組みについて分析した(Suto and Takehara, 2022). 次に特許情報関係については, 企業の保有する特許から測定された技術競争力と企業成熟度が, デフォルトリスクに与える効果を分析した. 長期パネルデータを使用した回帰分析の結果から, 成熟度と技術競争力は総資産ボラティリティを低下させるものの, 倒産距離を上昇させる状況は確認できなかった. ただし技術競争力は企業成熟度と総資産ボラティリティ、ならびに総資産成長率との間に確認された負の相関関係を緩和するモデレータであることが明らかとされた. 商標権関係の研究としては, 企業の保有する商標権ポートフォリオのリスク削減効果について分析した. 同研究では, ブランドエクイティは企業の成長性を低下させるものの, 同時にリスクを低減することが明らかとされた. またブランドエクイティは株式リターンを低下させる傾向を持つが, 同時にもたらされるリスク削減効果が上回ることにより, 企業のデフォルトリスクを低下させていた.
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