研究課題
本研究は,政府の資金調達手段として歴史上実施されてきた中央銀行券や政府紙幣の大量発行の中長期的な影響について、1937年から49年に経済統制下に置かれた日本経済を研究対象として現代的なマクロ経済学の観点から分析を行う。その上で、国債と日銀債務(日銀当座預金と日銀券)の大量発行によって維持されている1990年代半ば以降の日本の財政へのインプリケーション、とりわけ物価水準への影響について理論的、実証的な視座を得る。戦中・戦後の経済統制期の財政と1990年代半ば以降の財政に共通する側面は、旺盛な貨幣需要が日銀や政府の債務の受け皿となっていることである。2018年度、19年度の研究で明らかにされたように、戦中の経済統制期における旺盛な貨幣需要は、内地では、闇市場における財産秘匿のための日銀券需要、外地では、政府と軍部が大陸に創設したいくつかの中央銀行や発券銀行の銀行券への強制的な需要に支えられてきた。そうした旺盛な貨幣需要は、戦後、闇市場の価値貯蔵手段が日銀券から実物資産に移行するとともに縮小し、敗戦による領土喪失で大陸から享受していた貨幣需要をすべて失った。日本経済は、その過程で物価高騰に見舞われる。一方、現代日本における旺盛な貨幣需要の要因は、1990年代半ば以降から続くゼロ近傍の金利環境である。こうした旺盛な貨幣需要は、日銀券、日銀当座預金、国債の大量発行の受け皿となった。20年度の研究では、このような両期間の異同を踏まえ、物価水準の決定理論について、従来の貨幣数量説と新しく出てきた物価水準の財政理論(FTPL)を統合した新しい理論枠組を提出している。そして、その実証的な有効性を両期間のデータで検証するとともに、今後の日本経済の物価動向に関する予測作業を行ってきた。とりわけ、今後の物価調整過程において、終戦直後のような物価高騰が生じる可能性を検討した。
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金融経済研究
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Journal of International Economics
巻: 127 ページ: 103386~103386
10.1016/j.jinteco.2020.103386
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