研究実績の概要 |
研究課題に関する基本資料の収集に努めるとともに、内外の学会に参加し知見を広めた。とくに重要な意味を持ったのは、2018年8月にアメリカのボストンで開催された世界経済史会議WEHCへの出席であり、グローバルな視野の中で本科研の課題が持つ意味を鮮明にし、戦後中国経済史に於ける研究の課題と方法をめぐって世界の研究者と交流する機会を得た。 電子書籍の中の1章として、2018年度には下記の論文を公表することができた。Toru KUBO, Changing Patterns of Industrialization and Emerging States in Twenteenth Century Chia, in K. Otsuka & K.Sugihara eds.,Paths to the Emerging State in Asia and Africa, Springer Open, 2019, pp.141-167.近現代中国の経済発展を支えた要因として国際経済、民間部門、政府部門の3つを挙げるとともに、それぞれの要因が果たした相対的な意味を考慮し、1) 国際経済主導の発展(1880年代~1910年代)、2) 民間主導と政府の保護政策の下の発展(1910年代~1930年代)、3) 政府主導、戦時統制経済・計画経済の下の発展(1930年代~1970年代)、4) 再び国際経済主導の発展(1980年代以降)という4つの時期区分を提示し、それぞれに説明を加えた。さらに4つの時期を通じて見られる中国の工業化の特徴として、農村手織綿布業に代表されるような労働集約型工業化と上海の綿紡織業、満洲の製鉄業に代表されるような資本集約型工業化とが同時に進展していたこと、その背景には、欧州の二倍の領域に、条件の異なる多様な地域経済が並存しているという条件が存在することを指摘した。
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