新型コロナウイルスの感染拡大により史料の実地調査が制約された中で、広い視野で研究課題に関する考察を深めた。その最大の成果が『20世紀中国経済史論』(全582頁)である。同書は、現代中国経済が成立してくる過程で1940~70年代という時期が持った意味に関する考察を深め、軍事工業に傾斜した重化学工業の発展がめざされた一方、国民向けの衣料供給と輸出向け繊維製品の確保を両立させる方策として、化学繊維工業の展開も重視されるようになったことを明らかにした。1960年代初めに日本から導入されたビニロン生産設備は、その中心に位置した存在にほかならない。
|