研究課題/領域番号 |
18K01724
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小堀 聡 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90456583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会経済史 / 環境史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1920~70年代の日本における臨海開発(およびそれと密接に関連する水資源開発)、公害対策、自然保護の進展過程を多数の主体に着目して分析することである。世界史的にみても注目すべき史実が多く見られる神奈川県や東京湾岸を、おもな分析対象としている。 以上の全体概要のうち、本年度の研究実績は以下の通りである。 臨海開発については、京葉工業地帯関連の資料収集および新聞記事見出しの整理を行なうとともに、開発に成功しなかった事例として、神奈川県横須賀市の工業地帯造成事業について、地方紙のデータベースを利用した調査を実施した。また、戦前・戦後における東京湾岸の観光開発や、開発に伴なって勃興した新宗教運動の資料収集を進めた。 公害問題については、臨海開発に関連づけつつ、京葉と横須賀市の公害・公害対策についての調査を進めた。また、東京都を中心とする都市公害についても調査を進めた。この際、関連テーマを追究している研究者との間で集中的な討議を実施し、コンビナート型公害との異同について、認識を深めた。 自然保護については、先進的な事例として、戦後神奈川県(とくに、鎌倉、横浜、横須賀)の自然保護運動にかんする既収集資料の再調査を行なうとともに、追加的な資料収集を実施した。 研究成果として、東京湾開発についての英語論文と、雑誌『鎌倉市民』を舞台とする鎌倉の自然保護運動に関連する小文とを執筆した。いずれも2022年度刊行予定である。また、関連テーマの書評を執筆したほか、事典やテキストへの寄稿を通じて、研究成果の教育への還元も実施した。口頭発表では、東京湾の火力開発に関連する報告を国際学会で行なった。また、戦後東京の公害問題に関する学会シンポジウムにおいて、問題提起も行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の流行により遠隔地での資料調査に支障をきたしたものの、地方紙のデータベース契約などや古書籍・史料の購入などを通じて代替的な資料調査を進捗できた。これを通じて、神奈川県に関する調査をさらに進めるとともに、東京都・千葉県など東京湾岸一帯諸地域の比較検討を進めることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
東京湾岸を中心とする臨海開発、公害対策、自然保護の3領域について、その形成過程と帰結とを一次資料にもとづいてさらに具体的に解明する。2022年度については、以下の点にとくに力を注ぐ。 (1)臨海開発:千葉県および横須賀市の開発政策について、資料収集と調査をさらに進める。また、観光開発および新宗教運動についての既収集資料の分析を行なうとともに、追加的な調査を実施する。 (2)公害対策:千葉県および横須賀市の公害問題・公害対策についての調査を継続する。 (3)自然保護:神奈川県の自然保護運動についての分析をさらに進めた上で、内山岩太郎・津田文吾県政期を中心とする自然保護行政についての調査を行なう。 以上の研究内容については、論文の執筆などを通じて、発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
古書籍の購入や大型データベースの契約などにより、2021年度配分額を上回る額を執行したものの、新型コロナウィルス感染症の流行により遠隔地での調査に支障をきたしたため、2020年度までに発生した残額を解消するには至らなかった。 (使用計画)資料・古書籍の購入費、資料のデジタル化経費、英文校正費などに充当することで、2021年度に引き続き、感染症対策長期化の可能性を前提とした研究実施・公開体制を構築する。
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