科研費研究テーマ「20世紀独米金融・経済関係の研究1914年~1953年」のうち、2022年度においては、引き続き1920年代~1930年代のドイツとアメリカ合衆国の金融的相互関係の分析を続けた。その際、当初に予定されていたアメリカ合衆国ニュージャージー州プリンスンストン市のプリンストン大学図書館附属文書館にジョン・フォスター・ダレス文書の収集は、なお新型コロナウイルス感染症をめぐる受け入れ態勢が困難を抱えていたので、次善の策として、2021年度に引き続き、同大学文書館に元々現物が所蔵され、かつ同大学によってマイクロフィッシュに加工されて出版されている「外交問題評議会文書」の購入を行ない、それに基づいて研究を行なった。外交問題評議会は、アメリカにおける多国籍企業経営者や、国際金融業務担当の投資銀行ないしそれらと関連した法律事務所構成員等が数多く結集しており、そこで1929年に始まり1930年代に深刻化する世界大恐慌の中で「デフォルト」(債務不履行)になった多くの対外債券の保有者の取りうる対応策についての提言が提出されており、それらの中で、当時ウォール街に位置し、対外投資関係の法律事務を担当していた法律事務所サリヴァン&クロムウェルのシニアパートナーだった、のちのアメリカ合衆国国務長官ジョン・フォスター・ダレスの提言も集められている。本年度はそれらの分析に努め、のち1953年にアイゼンハワー政権の国務長官として1952年~1953年にロンドン債務協定の政府側担当者となるJ.F.ダレスの民間経済人としての行動の分析を深めた。
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