本年度においても、特に前半期において、新型コロナ感染症の問題により、予定してい遠方の資料館等における資料調査・収集は、多くを断念せざるを得なかった。このためすでに収集した資料の読み込みや、統計の整理、および所属機関である九州大学関連の資料集が、研究の中心となった。 具体的な作業としては、前年度までにある程度の進展があった、戦後復興期における筑豊の諸炭鉱、特に田川炭鉱の分析を基礎としつつ、それと対比するものとして、北海道における諸炭鉱経営に関する資料の読み込みを進め、また、それらをもとに研究協力者とも議論を深めた。そうした作業のなかで、戦後復興期の炭鉱経営においては、地域(炭田)間における差異が、これまで考えられてきたよりも、大きかったのではないか、という中間的な結論にたどり着きつつある。とりわけ、石炭流通に関する状況が、北海道と九州では大きく異なっており、それが起点となって、生産・労務管理にも大きな違いを生み出しているのである。ただし、この点を研究として公表していくためには、いくつかの点で、さらなる資料の読み込みが不可欠であり、今年度時点での発表には至らなかった。今年度後半においては、多少なりとも資料調査が行えており、ここで得た資料を中心としつつ、次年度に、上記の課題に取り組む予定である。 今年度まで、資料の調査・分析を継続してきた過程で得られた知見について、書評・総説の執筆に際して、利用出来たことも多い。このため、そうした小論についても、業績の一部として掲げている。
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