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2022 年度 実績報告書

北海道における労働市場の形成と「初期移民」-近代の炭鉱労働者を事例として-

研究課題

研究課題/領域番号 18K01729
研究機関北九州市立大学

研究代表者

土井 徹平  北九州市立大学, 経済学部, 教授 (30650840)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード石狩炭田 / 労働市場 / 労働移動 / 北海道移民 / 炭鉱 / 鉱山 / 鉱夫 / 移住
研究実績の概要

従来、炭鉱業の勃興により石狩炭田で発生した労働需要を充たしたのは、地理的に隣接する東北地方、特に金属鉱山が多数存在した秋田県から移住した労働者だったと考えられてきた。しかし筆者による一連の研究の結果、1910年代に至るまで、東北地方からの労働移動は限定的なものにとどまり、炭鉱では秋田県出身者に加えて北陸地方と宮城県を出身地とする鉱夫が主力を担っていた事実が判明した。これは当時の北海道が依然として「未開拓地」としてあり、移住希望者が自然災害などを理由に生業を営めなくなった一部の「窮民」(強いpush要因を持った者)に限られていたためである。
企業は、秋田県出身者のみでは充たせない労働需要を、「窮民」として流入した北海道移民を雇用することで充足しようとした。この結果、同時期、甚大な自然災害のあった北陸地方および宮城県と石狩炭田との間に移動流(「連鎖移住」)が生じ、労働市場の物理的な範囲が、東北地方から中部地方に至る広域にわたる結果となった。
そして同じく一連の研究の結果、上述の特質が第一次世界大戦を契機に抜本的に変化し、労働市場が東北地方を外縁とする比較的狭い範囲に縮小していたことが明らかとなった。これはまず、北海道移民の第二世代が就業年齢に達し、道内で一定の新規労働力を確保できるようになったことが背景にある。また「大戦ブーム期」、道内で近代産業が発展したことで外部地域との所得格差が広がり、隣接する東北地方(特に秋田県)から大量の労働移動が見られるようになったためである。
当該年度はこの実態を詳細に明らかにするため、主に秋田県を事例に県内の賃金労働の需給状況の分析を行った。この結果、主に農業に吸収されることで県内で滞留する傾向のあった若年労働者が、「大戦ブーム」以降、より労働条件のよい北海道に、「雑業労働者」として多数流出するようになっていた事実を確認できた。

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公開日: 2023-12-25  

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