研究課題/領域番号 |
18K01741
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
永廣 顕 甲南大学, 経済学部, 教授 (70268514)
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研究分担者 |
佐藤 政則 麗澤大学, 経済学部, 教授 (10192600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国債発行 / 国債流通 / 日銀引受 / 預金部引受 / シ団銀行 / 国債売却 / 国債転売 / 戦前期日本 |
研究実績の概要 |
本年度においては、「研究実施計画」の第一課題「国債流通市場における国債売買の構造とその変化をシ団銀行の国債保有と転売(売却)行動を中心に明らかにする」、第二課題「預金部資金や国債整理基金等の政府資金と国債流通市場との関係を明らかにする」、第三課題「大蔵省、日銀、シ団銀行の連携関係とその変化について再検証する」の課題全体の取りまとめを視野に研究を進めた。 研究代表者の永廣は、日本銀行金融研究所セミナーにおいて「戦前期日本の国債発行・流通市場」というテーマで研究成果を報告し、第一次大戦後の日本における国債発行額と国債残高の推移を踏まえたうえで、発行市場における新規国債の発行方法とその転換過程、流通市場における市場整備のための制度改革と国債取引を分析するとともに、発行市場と流通市場の関連性について考察した。あわせて、国債の発行と流通を通じて国債の保有構造がどのように変化したのかを分析し、現在の日銀依存の国債保有構造と比較した。その中で、国債の安定的な消化のために国債流通市場の整備が行われ、取引所市場における国債の売買、取引の拡大が図られたことを明らかにした。 研究分担者の佐藤は、これまでの研究成果を踏まえた寄稿論文「150年の『地域バンカー論』、恐怖症との闘い」を『NIKKEI Financial』誌に発表した。その中で、1873年の第一国立銀行設立以降の150年間のバンカー、特に地域バンカーにおいては、一つの金融組織において質を重視する消極的・臆病な健全経営観と、ある意味で楽観的な量を重視する拡大・成長志向の積極進取な経営観とが並存し、両者が鋭い緊張関係を保つ構図に経営の健全性と発展性を担保する最大のしくみがあり、その両者のバランスの崩壊が1990年代からの金融危機をもたらしたことを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度においては、前年度の「今後の研究の推進方策」で掲げたように、研究代表者・研究分担者の緊密な連携による収集資料の分析と精査、あわせて各々の研究の進捗状況の確認・調整を進め、個々の研究成果については学会・研究会等で報告するとともに紀要で発表し、第一課題「国債流通市場における国債売買の構造とその変化をシ団銀行の国債保有と転売(売却)行動を中心に明らかにする」、第二課題「預金部資金や国債整理基金等の政府資金と国債流通市場との関係を明らかにする」、第三課題「大蔵省、日銀、シ団銀行の連携関係とその変化について再検証する」の課題全体の取りまとめを視野に、研究成果をWorking Paper にまとめて公刊する予定であった。 しかし、依然としてコロナ感染問題が継続したことにより、前年度に比べて多少は緩和したものの、勤務先大学での授業準備等に忙殺され、十分な研究時間を確保することが困難な状況が続いた。また、日本銀行アーカイブ、国立国会図書館、東京大学経済学図書館等の都心の機関への移動が自粛要請により困難となり、オンラインによる閲覧・交付システムを利用したものの、追加的な一次資料の調査及び収集が進捗しなかった。研究の打ち合わせについては、オンライン会議(Zoom)により、月1回の研究打合会を開催し、研究代表者、研究分担者各々の研究の進捗状況を確認することはできたが、詳細な各々の研究の調整及び研究の取りまとめを十分に進めることができなかった。 その結果、個々の研究成果については、学会・研究会等で報告し、紀要等で発表することは実現できたが、本年度内に課題全体についての研究成果をWorking Paperにまとめて公刊することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」及び前年度の「今後の研究の推進方策」で掲げた予定よりもかなり遅れているが、オンラインでの研究打合会が軌道に乗り、研究代表者、研究分担者各々の研究の進捗状況を確認することはできており、徐々にではあるが、詳細な各々の研究の調整も進め、研究の取りまとめを図っている。また、オンラインによる閲覧・交付システムを利用し、追加的な一次資料の調査及び収集を進めている。 それらを踏まえて、研究代表者・研究分担者の緊密な連携による収集資料の分析と精査、あわせて各々の研究の進捗状況の確認・調整を進め、個々の研究成果については学会・研究会等で報告し、紀要等で発表していく。 また、第一課題「国債流通市場における国債売買の構造とその変化をシ団銀行の国債保有と転売(売却)行動を中心に明らかにする」、第二課題「預金部資金や国債整理基金等の政府資金と国債流通市場との関係を明らかにする」、第三課題「大蔵省、日銀、シ団銀行の連携関係とその変化について再検証する」の課題全体としての研究成果については、日本金融学会の秋季大会においてパネルセッションを組織し、報告することが内定している。これらの研究成果をWorking Paper にまとめて公刊する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」にも記述したように、コロナ感染問題が継続したことにより、前年度に比べて多少は改善したものの十分な研究時間を確保することが困難な状況が続き、都心の機関への移動が自粛要請により困難となり追加的な一次資料の調査及び収集が進捗しなかった。また、研究代表者、研究分担者各々の研究の調整及び研究の取りまとめを十分に進めることができなかった。 その結果、前年度に引き続き、研究代表者、研究分担者の「国内旅費」と「複写費」、特に研究代表者の「国内旅費」の未使用が持続し、依然として科研費全体の未使用額も残存したことから、補助事業期間再延長承認申請書を提出し承認された。 次年度は最終年度であることから、課題全体としての研究成果をWorking Paperにまとめて公刊する予定であり、その場合は印刷費用を計上している「その他」を使用する。 また、コロナ感染問題が収束・終息に向かい移動が自由となれば、追加的な一次資料の調査及び収集、研究課題全体の最終取りまとめに向けての研究打合会や研究報告会の機会が増えると考えられ、その際には出張旅費を計上している「旅費」を使用する。また、オンラインによる閲覧・交付システムを利用頻度が高くなることが予想されることから、その場合は複写費用を計上している「その他」を使用することで対応する。
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