本年度においては、「研究実施計画」の第二課題「預金部資金や国債整理基金等の政府資金と国債流通市場との関係を明らかにする。」、第三課題「大蔵省、日銀、シ団銀行の連携関係とその変化について再検証する。」を中心に研究を進めた。研究を進める中で、第三課題においては、第二課題との関連で、国債管理において預金部が果たした役割を重視し、大蔵省、日銀、預金部の連携関係とその変化についても検討した。 研究代表者・永廣は、1930年代後半までの預金部の資金運用のあり方の変化とそれにともなう国債運用の動機と実態について検討し、預金部は日銀引受国債の買入や国債市場からの国債買入により国債消化の円滑化と国債価格の維持を図ったことを明らかにした。 研究分担者・佐藤は、日銀を会長行とする全国金融統制会が稼働し始めた時点で、金融統制をめぐって何が問題になったのかを考察し、日銀主導の全国金融統制会による戦時金融の運営が機能するかどうかは預金部の協力次第であったことを明らかにした。 研究代表者・永廣と研究代表者・佐藤は、本年度から開始した戦時期日本の預金部、郵便貯金、全国金融統制会に関する研究プロジェクトの成果とともに、日本金融学会歴史部会と日本金融学会2022年秋季大会金融史パネルで研究成果を報告した。研究成果は、Working Paperの形にまとめて本年6月末に公刊する予定である。 研究期間の前半では、日銀引受国債の主要な買入主体であった銀行等の民間金融機関、特にその中核を成していた国債引受シンジケート銀行(シ団銀行)の国債取引を明らかにしたが、本年度に預金部の国債取引を明らかにしたことにより、研究期間全体を通じて、戦前・戦時期における国債の発行、引受、流通のしくみと実態が明らかとなり、国債管理において大蔵省、日銀、預金部、シ団銀行がそれぞれ果たしてきた機能の異同を解明することができた。
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