近世後期・近代前期における小型廻船に関する研究

2018 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K01743
• 研究機関: 公益財団法人三井文庫
• 研究代表者: 木庭 俊彦 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (10553464)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 経済史 / 交通史 / 石炭 / 三池炭鉱 / 帆船

研究実績の概要

本研究は、19世紀半ばから20世紀初頭における島原半島の船問屋を軸にした石炭流通構造の変容過程を明らかにすることで、近世末期の小型廻船と明治初期の帆船海運業の連続性と断絶性を浮き彫りすることを目的としている。日本最大の炭鉱として知られる三池炭鉱で採掘された石炭を分析対象とし、大牟田（福岡県）から島原、島原から中四国の塩田に至る流通経路に焦点を絞って、三池炭鉱、問屋、帆船（船主）の取引関係について考察する。
本年度においては、当該期における三池炭の市場動向を分析するために、三井文庫所蔵資料に記されている販売先・輸送先に関する基礎的な数値の入力を行った。明治日本における石炭市場の拡大については、輸出中心に研究が進められてきたため、国内の市場動向については不分明な点を多く残している。塩田市場の拡大と石炭問屋を介した塩田への販売・輸送ルートを把握することができた。
また、大牟田市石炭産業科学館に寄託保管されている島原の船問屋資料（山本家文書）を閲覧した。山本家文書は3,000点をこえる資料群であるため（その他未整理の資料が多数あり）、まずは同文書の全体を確認したうえで、三池炭鉱と船問屋の往復書類、塩田向けの廻船業者の所在を示す資料群を中心に撮影した。官営時代の三池炭鉱と塩田向け廻船業者との間には、船問屋・山本屋を介して販売・輸送に関する細かな規則が定められており、三者の契約関係の一端をうかがい知ることができた。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では大牟田市石炭産業科学館に寄託保存されている資料（山本家文書）を中心に分析をすすめていく計画であった。ただ、山本家文書には、想定した以上の未整理資料が含まれており、その確認作業が必要となった。また、一部資料の劣化が著しく、その撮影に多くの時間を要した。

今後の研究の推進方策

初年度に引き続き大牟田市石炭産業科学館で山本家文書の撮影を行うとともに、九州大学に所蔵されている石炭関係資料を調査する計画である。明治期の石炭市場の動向を記す一次資料を探索することが目的である。
なお、2年目においては、初年度の資料調査の結果を踏まえて、山本家文書の撮影および入力作業の効率化をはかる。保存状態の良い資料については、専門業者への作業委託による撮影を計画している。また、アルバイトを雇用して、三井文庫に所蔵されている三池炭鉱資料の基礎的な情報を入力し、三池炭の販売・輸送に関するデータを積み上げていく。船問屋および廻船業者の販売・輸送活動を分析する前に、まずは幕末から明治初頭にかけての三池炭の市場動向と輸送経路の全体像を明確にしたい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由としては、収集を予定していた資料群に予想以上の未整理分が含まれており、その確認が追加作業として必要となったこと、劣化・損傷の著しい資料の撮影に時間を要したことが挙げられる。保存状態の良好な資料については専門業者に撮影を委託するなど、資料収集の効率化にむけて資金を投入する計画である。また、アルバイトを雇用して、資料撮影およびデータ入力の作業をすすめていく。