研究課題
基盤研究(C)
本研究では、19世紀半ばにおける石炭流通の実態とその変容過程について、三池炭の海上輸送を担った廻船業者(「番船」と呼ばれた小型帆船)と島原半島の船問屋を軸に分析した。三池炭鉱で採掘された石炭が瀬戸内海の塩田を中心に市場を拡大していくなかで、石炭売買を仲介する島原の船問屋が重要な役割を担うようになった。この島原の船問屋、廻船業者、三池炭鉱の三者の取引関係について考察し、船問屋のもつ商業機能の多様性を提示した。
経済史
商人船主(買積船)の活動や売り手と買い手を仲介する問屋商人の機能・役割を把握することは、経済史および流通史の大きなテーマである。また、石炭産業史の分野においても、幕末・維新期の「藩営時代」の炭鉱経営には不明な点が多く残されており、石炭の販売と輸送に関する研究は進んでいないのが現状である。本研究は、1860年代半ばから1870年代半ばまでの島原を事例にしたものであり、時期・地域ともに限定的な分析であるとはいえ、当該期における石炭流通の特徴を理解するうえで重要な論点を提示していると考えている。