研究課題/領域番号 |
18K01749
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安嶋 是晴 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (40401880)
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研究分担者 |
古池 嘉和 名古屋学院大学, 現代社会学部, 教授 (50340063)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 伝統産業 / 地域文化 / 地場産業 / 輪島塗 / 井波彫刻 / 産業集積 / 伝統技術 / 職人 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、伝統産地の動向分析のためのツールとして、新たに打ち立てた「地域文化ストック」の有効性を明らかにすることである。地域文化ストックとは、一般的な文化資本に生活文化を融合した概念、すなわち地域内での生活や人々のつながりで生成される文化的な共有感などを加味したものである。初年度は、輪島漆器産地、井波彫刻産地の実態調査および比較対象産地の実態調査を行い4つの課題に取り組んできた。1つ目は、主体:文化的な財を生産する人的ネットワークの検証である。主体の役割,主体同士の関係性と相互作用,地域社会との関係性,波及効果等を明らかにするための基礎データを整備を進めた。過去の文献や資料等を中心に調査を行い,調査結果に基づき行政,組合から産地概要に関する聞き取り調査を実施した。2つ目は、技術:文化的な財を生産する職人の技術習得と伝承プロセスの検証である。職人の具体的な技術習得、伝承のプロセス、職人技の波及効果などを明らかにするための基礎データを整備した。さらに職人へのヒアリングを行い、具体的な職人の技術習得と伝承プロセスを明らかにした。3つ目は、制度:文化的な財の生産地を支える政策の検証である。伝統産地を支える政策や地域独特の慣習を明らかにするための基礎データを整備した。主に国や自治体のホームページ等から現状およびこれまでの支援施策などの調査を行い、地域独特の慣習については、自治体や地域住民からヒアリング調査を行った。4つ目は、地域:産地における文化的な財の受容状況の検証である。文化的な財やそれを生み出す職人労働が地域内でどのように受容されてきたのかを明らかにするための基礎データを整理した。さらに市史や資料などを参考に調査を行い、行政から産地での文化的な財の受容状況の聞き取り調査を実施した。今後は本データの追加調査を行うとともに課題解決に向けた具体策を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の文献整理を行うとともに現地調査の両面から地域文化ストックの構成要素の検証を進めている。本研究は、地域文化ストックとその循環を活用した創造的産地モデルを提起するため、地域文化ストックに影響を与える4つの要素の分析を行い、最終的に総合化し生活の質的向上を併せ持つ産地再生モデルの構築をめざすものである。今年度は4つの要素についての分析を順調に進め、地域文化ストックの概観を明らかにできたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実態調査で得られたデータや情報を活用し、また必要に応じて追加調査を実施しながら、産地再生の解決策の検討を深めて、論文・学会報告として公表する。それと同時並行して、これらの産地モデルの政策理論を抽出された要素から体系化する作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
輪島、井波の調査旅費が中心で、県外の調査が行えなかったこと(△150千円)、講師招へいによる研究会が開催できなかったこと(△250千円)、資料整理の研究補助が予定より少なかったこと(△100千円)、図書などの物品購入が予定より少なかったこと(△80千円)が挙げられる。次年度は県外調査、研究会の開催回数を当初の予定より増やす予定。
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