本研究の目的は、伝統産地の動向分析のためのツールとして、新たに打ち立てた「地域文化ストック」の有効性を明らかにすることである。地域文化ストックとは、一般的な文化資本に生活文化を融合した概念、すなわち地域内での生活や人々のつながりで生成される文化的な共有感などを加味したものである。 最終年度の研究活動は以下のとおりである。 昨年度、輪島漆器産地および井波彫刻産地のヒアリングを実施し、寺社などを中心とした神事や仏事、寺社での日常の行事などから醸される地域の共有感が地域基盤の形成に関わり、産地形成に有効に作用しているという仮説を確認した。また比較可能な近隣の伝統産地(高岡漆器、高岡銅器、越中福岡の菅笠)などの調査研究を行ったところ、特に越中福岡の菅笠では、地域固有の信仰心や精神文化があり、産地形成に作用していることも明らかとなった。 そこで、本年度は、輪島漆器、井波彫刻、高岡漆器、高岡銅器、越中福岡の菅笠などの事業者に対し、事業形態や歴史的な経緯、生活文化との関わりなどをヒアリングし、整理しつつ、文化的共有感の構造の検討を加えた。さらに最終的なまとめとして、研究内容に関する現地報告会を実施した。
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