本研究費を利用させて頂き、大規模アンケート調査を行うことができた。分析結果の検討については今後行う予定であるが、下記の内容を結果として把握できた、その点について記述したい。 まず、身体的な症状として、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる内容と長時間労働との関係を検討した。ここでは、身体的ストレスは役割に関連する要因が大きな影響を与えていたのに対して、長時間労働は仕事の量に影響していることを明らかにした。このことは、時短等で全体の仕事量を仮に減らしたとしても、役割に関する要因が未解決の場合は、身体的ストレスに影響を与えることを指摘した。以前の研究では、精神的ストレスに関しても役割に関する要因が大きな影響を与えていたため、精神的・身体的両ストレス削減に役割に関する要因が重要であることを指摘できる。 次に、女性管理職のストレスに関連した日米比較の検討についての研究である。ここでは、日本では仕事負荷と役割曖昧性がストレスに影響があるのに対して、アメリカでは有意な影響がなかったこと、また、日米の共通点として、役割葛藤がストレス反応に強い影響を与えることを指摘した。この点について、アメリカでは日本と比べて職務の境界が明確であることを指摘し、その影響から役割曖昧性や仕事負荷のような仕事の境界に関連する要因が影響しなかったであろうと考えている。 最後に、健康経営に関連する内容として、健康経営という新たな領域が企業経営の問題として進展していることに関連して、バランススコアカードという技法を用いた従業員のストレスを削減する方法を検討し、ストレスを削減する能力が健康経営の遂行のカギとなる点を指摘した。
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