我が国の大学等には、優れた科学技術の研究成果が多く存在するものの多くの研究成果は商業化まで至っていない。大学等における産学連携・技術移転はイノベーション創出に極めて重要であると考えられており、科学技術の研究成果を産み出す「研究者」と研究成果の商業化の担い手である「産学連携実務者」の考え方、取り組み方はイノベーション創出可否の鍵になると考えられる。本研究では、研究成果の商業化に関わるステークホルダーである「産学連携実務者」と「理系研究者」とに着目し、日本において何が商業化の課題・制約となっているのか、その心的要因を明らかにし、更に欧州の分析結果と比較して我が国が抱える科 学技術研究成果の商業化における問題点を明らかにすることを目的としている。
令和4年度は、令和3年度から取り組んできた日本の2つの大学の技術移転パフォーマンスの比較、都市部の大規模大学と地方都市小規模大学の技術移転パフォーマンスを比較について、大学及び研究者の属性、大学の技術移転機関が果たす役割を調査し、商業化にどのような影響を及ぼすかを検証した内容の論文がInternational Journal of Technology Managementに掲載された。
また、大学発技術の上市(製品化)を促進するプロセス要因を明らかにするために、日本の技術移転機関(TLO)における39件のプロジェクトを調査した。質的比較分析の結果によると、上市の促進のために重点化されるべき活動は特許出願前の入念なプレマーケティングと、製品開発ステージにおける境界連結活動の2点である。この結果をまとめた論文が組織科学に掲載された。
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