研究課題/領域番号 |
18K01759
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
竹田 陽子 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (80319011)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 創造的成果 / 創造プロセス / 企画 / 技術開発 / クリエイティブ / 他者視点取得 / 認知的共感 / 表象 |
研究実績の概要 |
本研究は、今までにない製品・サービス・ビジネスモデルを生み出そうとする状況において、ビジネス企画・技術・クリエイティブの3職種の発想と行動のパターン、組織における位置づけの違いに焦点をあてることで、場創発型の異分野協働を効果的に出現させ、新しい付加価値を生み出すメカニズムを解明することを目的としている。本年度は、技術者、ビジネス企画者、クリエイティブ職が創造プロセスの8段階(Sawyer, 2012)において、思考モード(各種の言語化、イメージの内的表象、他者視点取得など)をどのように使い、創造的な成果と業績にどのような効果を及ぼしているのかを、質問票調査(3職種合計n=800)に基づき分析した。その結果、各職種、各プロセス段階でどの思考モードが使われるかは職種によって特徴が異なり、また、出現頻度の低い思考モードが成果につながっている場合が少なくないことがわかった。技術者があまり使わないが使えば効果がある思考モードは、問題認識段階でユーザーの立場になって考え、情報収集の段階で、イメージや感覚、エピソードを頭に浮かべることである。アイディア創出以降は、技術者が元来得意であろう理論的言語も効果が生じる。ビジネス企画者は、論理、感覚両方の思考モードを多彩に使っているが、比較的出現頻度の低い、一見して無関係のことを結びつけて考えることが問題認識や間接情報収集で効いていた。クリエイティブ職は、思考モードが多彩であるものの論理的思考が少ない傾向があるが、理論的言語の使用、因果関係を考えることの効果が問題認識からアイディア創出にかけて見られた。技術者では問題認識段階であまり使われていないユーザー視点の思考が効果的であることなど、相対的に使用頻度が低い思考モードがパフォーマンスを有意に向上させる現象がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビジネス企画・技術・クリエイティブの3職種に対する質問票調査を実施し、各職種、創造プロセス段階別の特徴を分析し、さらに、創造的な成果につながるメカニズムの違いについて分析した。また、量的調査の分析枠組みには、デザイン思考ワークショップにおける質的調査において見出した、他者視点取得、認知的な共感が創造的な成果の鍵となるという知見が貢献している。さらに、ナラティブ表現と他者視点取得の関係について、過去におこなったデジタルストーリーテリング・ワークショップにおけるデータを再分析した。
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今後の研究の推進方策 |
ビジネス企画・技術・クリエイティブの3職種の発想と創造的行動のパターンの違いの分析に加えて、3職種の人的ネットワークの違い、創造プロセスへの関与の程度、与えられている経営資源、組織からの評価の違いなどの組織コンテクストの違いを分析したうえで、創造的成果につながるメカニズムに関するモデルをさらに精緻化する予定である。また、特定職種に絞った深い分析も同時に行なっていく予定である。
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