研究課題/領域番号 |
18K01765
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
田畑 智章 東海大学, 情報通信学部, 准教授 (00329103)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ワークライフバランス / 働き方改革 / 貸借対照表 / 財務分析指標 / 他者支援 / 定量化 / 可視化 |
研究実績の概要 |
現在,企業においては長時間労働による疲弊や,仕事と家庭との調和がとれないことによる苦悩など,従業員のワークライフバランス(WLB)に起因する問題が多く存在する.中にはうまくバランスがとれずに離職するケースもあり,これが特に管理職や技能労働者の場合は替えがきかず,企業にとっては大きな損失に繋がることもある.政府もこのような状況を社会問題と捉え,2017年1月の国会で「働き方改革」を提言している. しかし,解決のためのアイデアは各方面から呈されているものの,現状効果を測ることが未熟であるため,案の有効性も判断しづらい状態にある.案の効果を測るためには現状どの程度仕事と生活の調和がとれているか定量的に把握する必要があるが,従来のWLB研究分野では定性的なアプローチ(ケーススタディ等)が採られることが多く,対応が難しい. このような状況の下で本研究は,企業等の財務状態を表示する貸借対照表を,従業員個人の持つ「時間」に着目し,その運用方法を援用したワークライフバランスシート(WLBS)を開発し,個人の時間の運用状態を可視化を行った. これに対して2018年度においては企業横断的に調査を行う予定であったが,パイロット的に調査を行った神奈川県の部品加工業E社が時系列(あるサンプルに対して一週間分かつオンシーズン・オフシーズンの2回分)のデータを提供いただき,WLBSの有効性の確認および,その時系列変化を捉えることができた.これについての結果は,日本経営工学会2019年度春季大会にて発表を行った. 上記結果において,データの採取方法が固まったため,2019年度においてはもともと予定していた企業横断的な調査を行い,サンプル数を広げ,一般性を確保することを目標としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画においては,2018年度において夏冬にかけて4回アンケートを実施するとなっていたが,実際は2回に留まっている.しかしながら,企業の協力により,1回のアンケートにつき勤務日である月曜から金曜の計5度採取できたので,ボリュームとしては計画以上となっている.また,学会や産学連携フェスなどで積極的に公表を行った結果,協力企業候補も増え,着実に次年度へのサンプル増加へつながっている.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の調査研究により,アンケートの採取方法,WLBSへのまとめ方,可視化方法などが決定された.よって,次の段階として,大規模調査(200~300名ほど)を2019年度7月までに行う.8月以降調査表を回収し,データをまとめる(1つのExcelファイルで管理し,厳重に保管する).まとまったデータから一人一人のWLBSを作成し,統計的な処理を通じて一般性・汎用性の確認を行う.また,貸借対照表における財務分析のように,WLBSを用いて時間のバランスに関する分析を行い,職種ごとの傾向,職位ごとの傾向,部署ごとの傾向,年齢による傾向,性差などを把握する.この作業はアンケート実施後データ入手次第順次に行っていく.その上で,分析した結果に対して,企業の人事担当者に個人情報に注意しながらフィードバックを行いつつ,明らかになった問題状況から新しい福利厚生や支援制度の設計を行う.これを2020年1月から7月にかけて行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】本研究における調査は横断的なものを想定しており,2018年度の段階で複数の企業における複数の従業員に対して調査を行う予定であった.しかしながら,パイロット的におこなった企業(神奈川県の部品加工業E社)が非常に協力的で,ひとりのサンプルに対して一週間分かつオンシーズンとオフシーズンの2回分採取させてもらえることになったので,2018年度は横断的な調査ではなく深耕的な調査に変更した.そのため,横断的に調査を行うための費用を2019年度に移行することとした. 【使用計画】 マクロミルやクロスマーケティング社などの調査会社に対して,前年度の結果を踏まえまとめ直した調査票を用いて横断的な調査(200~300名程度)を依頼する.
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