研究課題/領域番号 |
18K01768
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
馬場 敏幸 法政大学, 経済学部, 教授 (00359663)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金型産業 / サポーティング産業・裾野産業 / 自動車産業 / グローバルバリューチェーン(GVC) / 産業集積 / 経済地理 / 移民 / キャパシティビルディング |
研究実績の概要 |
2021年度はブラジルの地場金型産業集積地ジョインヴィレの各金型企業の設立と発展について研究を進めた。創業者の生い立ち、幼少年期の教育と将来への希望、就職と金型関連技術の学習・習得、自らの企業創業の経緯、創業以後の金型関連技術の学習・技術技能蓄積、ジョインヴィレ金型産業集積成立・発展、ジョインヴィレ金型産業集積特質形成の経緯、教育機関、移民と創業・地域産業集積や金型関連技術の学習などである。それらを前年度提唱の「ジョインヴィレ・メカニズム」を用いて整理検討した。 1960~70年代のステージ2の時期、金型ユーザー企業内に金型メンテナンスのためのツールショップが設置された。メンテナンスを通じて金型技術は学習・蓄積され、金型本体も製作されるようになった。1970年代後半からのステージ3,4の時期に金型ユーザーの経営上の問題などから金型部門が切り離され、金型部門勤務の従業員がスピンアウト・スピンオフ創業するなど金型専業メーカーがジョインヴィレに生まれた。ブラジル開発銀行の優遇金利適用もジョインヴィレの金型メーカー誕生を後押しした。1970年代後半~80年代に金型ユーザー社内に設置された金型内製部門をもとに、ジョインヴィレで第一世代の金型メーカーが誕生し、小規模な金型産業集積が形成された。1990年代中盤以降のブラジル経済の発展と金型需要の拡大、大手金型メーカーの解散による労働市場への金型人材の供給などにより、金型企業の創始が相次いだ。2000年代以降もブラジル経済の発展により金型企業の設立は相次いだ。 またジョインヴィレ金型産業集積の特質であるモールド金型が多い理由、移民母国と金型技術習得の関係および金型技術習得チャネルの変化、地域の金型教育機関の貢献なども解明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度までにジョインヴィレ金型産業集積の誕生・形成と発展のステージについて、メカニズムを提唱した。2021年度はさらに具体的にブラジルジョインヴィレの金型産業集積の立地、状況、発展の経緯、産業集積特色の形成、移民母国と金型技術習得、金型技術習得チャネルの変化、地域の金型教育機関の貢献などについて、オーラルヒストリーを丹念に分析した。その結果、それらについてかなり解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度については、イタリア系金型産業集積地である、カシアス・ド・スルの金型産業集積の形成と発展についてオーラスヒストリーをもとに検討したいと考えてる。またコロナ禍によりブラジルの産業界に大きな変化が生じている。コロナによる金型需給の変化、グローバルバリューチェーンの変化について、世界各国の主要自動車生産国と比較検討することを考えている。その際、リーマンショック時の変化と比較しつつ、検討を行いたい。 これらの研究成果については国内外の学会・専門誌などで広く公表していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍により当初計画していた国外企業訪問調査が実施不能になった。また予定していた国外・国内学会はすべてコロナ禍によりウェッブによるバーチャル実施となった。このため調査費の当初計画に大きな変更を余儀なくされた。他方コロナ禍によりパソコンによる計量分析、パソコンでの各種バーチャル会議、バーチャル打ち合わせの頻度が増え、パソコンの使用頻度と必要性が急に高まった。そのため海外出張費用を新規パソコン購入費用に代替した。今年度はコロナ禍の状況を見極めつつも、積極的に研究成果の発表を行う予定である。
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