最終年度となる2023年度は、集大成としてまとめた「人的資本経営に関する一考察(社会起業研究第3巻)」をさらに定量情報やその分析を盛り込み発展させた、「日本の上場企業における人的資本経営に関する考察」を環境経営学会研究報告大会で発表を行った。本研究では日経225企業全社の統合報告書から人的資本経営の状態のデータベースを作成し分析を行った。ESGの社会側面の項目を抽出しテキストマイニングを実施したところ、日経225企業の人的資本経営関係の単語は、人権(労働慣行)・労働安全衛生・ダイバーシティ&インクルージョン・健康経営(ウェルビーング)・人材育成が行われていて、定量的情報開示(ESGデータ集等の一元化された情報)は一部の企業では行われているがまだ途上であることがわかった。結論として、日本国内で求められる開示項目、US/EUで求められる開示項目、格付・評価機関が求める開示項目、株主/投資家が求める開示項目、広く社会が求める開示項目を前提に、「比較可能な情報」を人的資本に関する「リスク」と価値向上への「戦略」に関して開示し、イノベーション創発に関連する自社の「独自性」を開示の必要性が結論として導かれた。女性の社会進出と企業及び社会経済の関係からスタートした研究であったが、グローバルな社会システムと企業のコンティンジェンシーな関係性から戦略的人的資本経営論へと研究を発展させることができた。企業における女性の活躍は多様性の観点から企業の業績を引き上げる可能性が高く、また離職者を減らすことにもつながることが研究から判明したが、それらを経営システムに反映させるためには戦略的人的資本経営が必要である。
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