中小企業のアジア進出増加に伴い、現地での受注環境が激化し、事業縮小や撤退も余儀なくされる企業もみられている。そうしたなか、国内で手掛けていない新事業を現地で立ち上げ、新たな展開を図る企業がある。本研究は、移転すべき新事業に必要な経営資源(優位性)が国内にないなかで、なぜそれが可能になるのかについて明らかにした。 それは現地には国内にはない有利な条件・環境があるからで、その一つが「確実な需要分野」である。これは現地に需要がありながら、その担い手の不足によって生じる「未充足の需要分野」、そして「少量多品種、小回り、特殊、特化」という特性から現地に担い手が現れない「高付加価値分野」からなる。現地に未進出の企業による両分野への参入についてもサンクコストや産業特性から困難であり、そのため既存進出企業にとって有利な「確実な需要分野」となる。 もう一つの有利な条件・環境は「良好なビジネス環境」が現地にあることで、海外では「系列」や「しがらみ」がなく、国内では面識のない企業、面会すら困難な企業から受注する機会もうまれている。これを可能にするのは現地に形成されたフォーマル、そしてインフォーマルな人的ネットワークで、相互の活動を支援し合うコミュニティが出来ているためである。日本の地方にもよく似た環境があり、ここでは地縁血縁で結ばれた支援者が新事業展開のための支援インフラとして機能している。海外でも同様のことが考えられ、直面課題として販売先の問題に次いで多い経営資源(人材、技術・ノウハウ、資金)の問題の解決に貢献している。
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