研究課題/領域番号 |
18K01776
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 典司 立命館大学, 経営学部, 教授 (20309090)
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研究分担者 |
八重樫 文 立命館大学, 経営学部, 教授 (40318647)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デザイン / デザインマネジメント |
研究実績の概要 |
本研究は、全国各地で進行しつつある伝統工芸の振興策について、デザインマネジメントの一手法であり、近年、注目されつつあるデザイン・ドリブン・イノベーション(Verganti2003 佐藤2012)の手法を使って研究・分析を行うものである。デザイン・ドリブン・イノベーションとは、製品に新しい意味(製品の体験から得られる価値など)を与えることによって生じるイノベーションを指し、純粋な技術革新によるイノベーションとは異なる概念である。製品のデザインを工夫すること、他分野の技術の導入、消費者の潜在ニーズ抽出などによりデザイン・ドリブン・イノベーションが実現される。本研究では、代表研究者(佐藤)が、長年にわたって実践してきた京都市や滋賀県でのデザインによる伝統工芸振興事例を中心に、全国の同様の工芸品振興事例なども研究対象としながら、デザイン・ドリブン・イノベーションの手法をベースとして、その有効性や課題等について研究するものである。 平成30年度は、滋賀県伝統産業振興Mother Lake Products プロジェクトにおいて,デザイン・ディスコースの中で多様な参加者がどのような意思伝達,叙述,実践活動を行っているのかについて参与観察を行った。KIKOFブランドの開発に至った滋賀県伝統産業振興Mother Lake Products プロジェクトが、その後どのように展開し、他の産業と繋がり、滋賀県における伝統産業振興にどう影響を与えているのかを観察した。2007年におこなった深澤直人氏との京都仏壇の製作事例について、当時の関係者へインタビューを実施した。また、伝統工芸産業の現状と課題および今後のビジネス展開の可能性を研究論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、平成30年度は、滋賀県伝統産業振興Mother Lake Products プロジェクトにおいて,デザイン・ディスコースの中で多様な参加者がどのような意思伝達,叙述,実践活動を行っているのかについての参与観察を行うことができた。京都仏壇の製作事例についても、当時の関係者へのインタビューを実施した。また、伝統工芸産業の現状と課題および今後のビジネス展開の可能性を研究論文として発表できた。一方で調査データの整理については十分にできておらず、平成31年度に引き続き行うこととしたが、全体の進捗状況としては概ね順調だといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年は、引き続き、滋賀県伝統産業振興Mother Lake Products プロジェクト活動を通じた参与観察を行うと同時に、全国で実施されている(あるいは過去に実施された)デザインによる伝統工芸産業振興事例について、参与観察、あるいは参加者へのインタビューなど通じて、デザイン・ドリブン・イノベーションの視点から分析を行う(*現時点で考えている事例としては、山形県カロッツェリアプロジェクト、佐賀県有田の有田焼デザインプロジェクト、京都GO ON プロジェクトなどを想定している)。なお、参与観察調査において得られたデータは、理論化のためのコーディングを行い、質的マトリクスや意味・因果ネットワークなどの質的データ分析手法を用いる(*なお、準備が整い次第、前年の平成30年度から、全国で行われているデザインによる伝統工芸振興事例調査を開始することも想定している) 平成32年は、それまでの参与観察調査、およびインタビューなどにおいて得られたデータをデザイン・ドリブン・イノベーションの視点から分析し、伝統工芸振興のためのデザインマネジメントの理論モデルの構築を行う。なお、研究成果内容については、前述のデザインマネジメントラボサイトへの掲載や、学会発表・論文発表、できれば書籍化などを通じて、広く研究成果の社会還元を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理作業を次年度に行うこととなったためPC等の備品の購入を見送った。またデータ整理で予定していたアルバイト謝金も発生していない。インタビュー謝金については今回はとくに支払いが生じなかった。資料印刷については所属機関のものを利用した。次年度使用額は、平成31年度にデータ整理用のPC等の備品購入とアルバイト謝金での使用予定である。
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